――堺市はどんな街ですか?
田中:仁徳天皇陵古墳をはじめ、千利休の屋敷跡や与謝野晶子の生家跡などの歴史的な名所がある街です。伝統産業は刃物のほかに、陶芸や緑茶、染物など数多く、なかには椅子専門の修理屋という珍しい商売もあります。
松永:経済成長の波にあおられて縮小した分野がある一方で、刃物などの分野では若い担い手が増えています。そうした今も続く伝統に加え、おしゃれなカフェや雑貨屋、レストラン、バーなどの新たな見どころも発信して「堺市の観光案内所」としての役割も果たしていきたいです。
――これまでの活動の反響は?
松永:手づくりジーンズにこだわる市内のアパレルショップを取材し、記事を発信したところ大きな話題になりました。当店のフェイスブックページへのアクセス数は従来の倍ほどになり、先方には多くのテレビ局から出演依頼が来たそうです。
田中:東京在住のシンガーソングライターのライブを当店で開催するなど、堺市出身のアーティストたちとの交流の機会が、メディアを通じて日増しに多くなっています。「堺市を盛り上げるためなら、いつでも歌うし、なんでもやる」とまで言ってくれている音楽団体もあります。
――今後の目標や展望は?
田中:実は遠方よりむしろ地元の方に、堺市のブランドが浸透していません。優れた工芸品や歴史的な場所などが、あまりにも身近な環境のなかにあるからだと思います。地元の面白さを再認識してもらって住民同士の一体感を高め、もっともっと情報を全国に発信していきたいです。
松永:職人や店主同士の仲が非常にいいことも、堺市の特色のひとつです。特に若い人ほど、利害にこだわるよりお互いに高め合い、自分の商売や技術をよりよくしていこうという精神にあふれています。そこに大きな将来性を感じています。