ライブから半年が過ぎた今年3月、再び動き出す。しかし、磯尾さんはあの頃のことをすっかり忘れていた。「高校生起業家育成プロジェクト」に参加をしたメンバーもそれぞれ大学へ進学し、礒尾さんも来年の大学進学へ向けた受験勉強に追われていた。
礒尾さんにスイッチを入れたのは何だったのか。当時、礒尾さんが幼少の頃から大好きだったドイツのバンド「BLACKMAIL」が、新しいアルバム「Ⅱ」を発売するというニュースを音楽サイトで見た。早速アルバムを購入した。「あまりに楽曲が格好良く、感動したあまりに、フェイスブックのメッセージ欄からBLACKMAIL宛にファンレターならぬ、ファンメールを送りました」と礒尾さん。
【私は日本の高校生です。とてもBLACKMAILのことが好きで、新しいアルバム「Ⅱ」も良かったです。】
BLACKMAILとは、今年20周年を迎えるドイツの有名なロックバンドだ。日本には9年前のサマーソニック出演をきっかけに来日を果たした。当時8歳だった礒尾さんは、どうしても彼らのライブを観に行きたくて、両親にお願いしたが、門限の許可が出ず、ライブを観に行くことができなかった。「その頃のとても悔しい思いは9年経った今でも覚えていて、そういった気持ちもファンメールに書いて送りました」(礒尾さん)
【私は8歳の頃から、「いつか絶対にBLACKMAILのライブを見たい」と思っていました。大人になったら、ドイツに行きます。】
その数日後、なんと彼らからファンメールの返信が届いた。
【オッケー!俺らがトウキョウに行くよ!】
メールをもらったときに、「ただただ、とても驚いた」と礒尾さんは振り返る。こうして、BLACKMAILが来日することが決まった。
せっかくライブを開催するなら、昨年のイベントで達成することができなかった、東北への寄付というチャリティーを再度チャレンジしたいと思いたつ。
この思いをBLACKMAILにも話し、彼らからも賛同をもらう。彼ら自身も、東北に寄付をするためのお金を集めた。コンサートへの出演はノーギャランティーで、彼らのマネージャー、音響照明などのコンサートスタッフも、ノーギャランティーという条件で来てくれることとなった。渡航費、宿泊費、機材費、といった必要な費用は、彼らがドイツ国内のクラウドファンディングサイトで集めたのだ。
こうして2年目の開催となる「ROCKGODDAM」が始動した。
■日本の音楽シーンの課題