社会と接点を感じられなくなり、ますます自宅に閉じこもった。「社会がどうなろうが、自分には関係ない。だから、他人から叱咤激励を受けても、一歩踏み出せなかった」。

社会に距離を感じることで、人の生き方に共感を覚えず、例え、誰かの成功ストーリーを聞いても、「その人だからできただけで、自分とは重なり合わない」と思い込んでしまう。

Aさんを変えたものは

学生時代にかかわっていたサークル活動が縁で、今では民間企業で働いている。26歳での初就職だ。なぜ、社会に出ることができたのか。特別なやる気があったわけではない。「仕事内容が好きだったこともあるし、勢いで履歴書を書いてみたら通っただけ」。

毎日自宅で迎えた時間を、今では会社で過ごす。引きこもり時代の自分へ伝えたい言葉を尋ねると、「何とかなったね(笑)運が良かったね、普通はあり得ないことだよ」だ。

「ニート」とは、非労働力人口のうち15~34歳で卒業者かつ未婚で、通学や家事を行っていない者だ。2011年の厚生労働省の発表では60万人いるとされている。60万人なので、東京都の人口で充てはめると約20人に1人がニートとなる。Aさんの考えは、ニートの中では一例であるが、あなたは彼の本音を聞いてどう思っただろう。

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