仕事、消費、食事など、人は意識しなくても、あらゆる面で社会とつながっている。しかし、Aさんは引きこもり中に、「社会で起きているあらゆることが他人事のように思えた」と話す。

Aさんの一日は、朝8時から始まり、ネットや新聞を見て過ごし、深夜1時に寝ることで終わる。バイトもするやる気がなかったので、家族以外の人とは話す機会がなかった。「いまさら会っても、愚痴を言うだけで迷惑をかける」と、友人や先輩などとも会わなかった。

家族からは、「やりたい仕事はあるのか」と聞かれるが、志望動機が書けずにいたので、良い返事ができなかった。職が決まらずに口論になることもあった。

あるときは、2カ月の間、家族以外の誰とも話さず、家から一歩も外に出なかった。2カ月ぶりに外に出て、コンビ二に行ったことがあった。レジで店員から、「袋は入りますか?」と尋ねられたとき、Aさんは自身の異変に気付いた。

言葉が出なかったのだ。頭の中では、言いたいフレーズが分かっているのに、声に出すことができなかった。とっさにAさんは「袋は要らない」というメッセージを伝えるために、手と顔の表情でジェスチャーを取った。

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