通信制高校や定時制高校の制度を変革する必要性も訴える。昭和30年代にもともと勤労学生のためにスタートした高校だが、生徒の対象が大きく変わった今も当時と同じ法律やカリキュラム、制度のまま引き継がれているからだ。「全日制高校の教育を短縮して行う場所ではなく、通信制、定時制、それぞれに合うカリキュラムに作り替えていく必要がある」と今井さんは話す。
今井さんはイラク戦争が起きた18歳の時、劣化ウラン弾の危険性を訴えるためにイラクに渡り、現地で人質となった経験を持つ。そのときに日本で批判を受け、自己責任論の議論が巻き起こったことと、現在の不登校、中退経験者の体験が似ていると感じたという。このことがD×P設立のきっかけとなった。
通信制高校が増えた背景として「多様な個性を持つ生徒が増えたことや、株式会社でも学校を作れるように制度が改正されたことなど複合的な要因」(今井さん)があるが、現在の体制では教師の数が足りず、不登校や中退を経験した生徒が自分で将来の方向性を見つけるためのサポートが無いのが現状だ。
この問題にいち早く気付き、事業を展開してきた今井さんは「自分1人でも積極的に動ける子はいい。動きたいのに動けない子の一歩を先生方と、僕らは導きたい。若者の挑戦がバッシングされてしまう社会はおかしい」と語り、明るい将来を見据えることができる仕組みのひとつ、社会の階段になりたいという。今後は定時制高校にも事業の幅を広げる予定だ。
写真キャプション「笑顔で話す今井紀明共同代表(大阪市城東区のD×P事務所)」