世界67カ国で市民によるゴミ拾いデータを集めている日本発のサービスが注目されている。2013年、世界最大規模の環境カンファレンスで優勝した「PIRIKA(ピリカ)」だ。いつ、どこで、どんなモノが捨てられているのかが分かると、企業の商品開発や行政の清掃条例などにも影響が出ることは必須だ。(オルタナS副編集長=池田真隆)

ピリカを開発した小嶌不二夫さん(26)、同サービスは京都大学大学院1年時に開発した

ピリカは、30代~40代を中心に26000人が使っている。サービスの仕組みは簡単だ。無料のスマートフォンアプリ「ピリカ」をダウンロードして、拾ったゴミを撮影し、投稿するだけ。拾ったゴミの写真には、ほかのユーザーからフェイスブックの「いいね」ならぬ「ありがとう」が届けられ、ゴミ拾いでコミュニティーができる。

投稿された写真には、犬がゴミを拾っているものや、拾ったゴミでアートをつくっているものなどもあり、見ていた飽きがこないことも人気の秘訣という。

投稿された写真からは、「時間」「ゴミの種類」「数量」「位置情報」などが分かるので、データを分析すれば、都市における清掃活動・ポイ捨て防止の条例制定・啓発などの効果を測定できる。

個人でも使えるが、企業・団体用のサービスもある。ウェブフォームに、「拾ったゴミの量」「参加人数」「写真」「位置情報」などを記入すると、自動で活動の様子が分かるページが生成される。

フジテレビやキリンビールマーケティング、鎌倉市など企業・行政・NPOら30以上の団体が利用している。個人と同じで、団体向けサービスも無料だ。ピリカ上で1日に拾われるゴミの数は、平均で5363個だ。2011年5月からサービスを開始し、これまでに110万点以上のゴミ拾い写真が投稿されている。

ピリカはアイヌ語で「美しい」という意味を持つ言葉だ。ゴミ拾いのデータを定量化するアイデアは、2010年に生まれた。当時、京都大学大学院エネルギー科学研究科1年だった小嶌不二夫さん(26)が、大学院を休学し、世界18カ国を旅していたときだ。

「訪問した全ての国で大量のポイ捨てされたゴミを見た。環境破壊、悪臭、景観や治安の悪化などの原因となっていた」と小嶌さん。ゴミ拾い活動をもっと気軽に楽しく取り組めるようにしたら何か変わるかもしれないと思い、帰国後にサービスの開発に取り掛かった。

小嶌さんは、ゴミ問題を解決するためには3つの方法があると分析する。①ゴミの発生を防ぐこと、②ポイ捨てを防ぐこと、③ゴミ拾いをすることだ。この中の、③が一番手をつけやすいと思い、アプローチした。

ゴミ問題を解決するために、「現状把握している段階」と小嶌さんは話す。「今は巨大な倉庫にデータを集めているような状況。今後データを分析し、捨てられやすい商品傾向や場所などを判明し、行政や企業と連携し、ゴミ問題を解決する活動を行っていきたい」。


PIRIKA