国内唯一の精神科看護師の職能団体である日本精神科看護技術協会(以下、日精看)は11月1日、精神障がい者の社会参加を促進する取り組み「日精看 しごとをつくろうプロジェクト」を始める。プロジェクト第1弾では、看護師向け通販事業者として国内最大手のベルーナと連携し、精神障がい者作業所で製造しているバスボムをノベルティとして採用し、全国の精神科看護師に配布する。看護師のいつもの買い物が、障がい者の雇用を生み、工賃を上げる仕組みとなる。(オルタナS副編集長=池田真隆)

宮城県亘理郡の山元町にある共同作業所「工房地球村」で働く人々


精神障がい者の社会参加を促進するためには「働く場所」の確保が必要不可欠だ。現在、障がい者が就労に向けた第一歩として利用しているのが作業所であるが、その工賃は全国平均13079 円(厚生労働省調査「平成22 年度工賃(賃金)月額の実績について」)と最低賃金の10分の1以下であり、経済的自立は極めて難しい。

日精看では学術集会を毎年各地で開催しており、地元の作業所が出店していた。多いときには10 箇所近くの作業所が、学術集会の期間中にパンやお菓子、雑貨などの商品を並べていた。

しかし、出店している作業所のほとんどが、販路の拡大に苦戦している現状がある。この課題に対して、日精看は学術集会での出店という単発的な支援だけでなく、作業所の販路拡大や情報交換のための全国的なネットワークの構築など、継続的な支援活動を行いたいと考えていた。

そこで、看護師向け通販事業者として国内最大手のベルーナと連携し、作業所の仕事を増やし、工賃上昇につなげる社会貢献事業に取り組みを始めた。

日精看が毎月発行する情報誌『ナーシング・スター』の流通網を通じて、全国の会員4万人に看護師向け、ベルーナの子会社ナースリーが発行している通販カタログ『Nursery(ナースリー)』を配布する。会員が商品を購入するとノベルティとして作業所で製造された商品を配布される仕組みだ。


作業所の商品をノベルティに採用することで作業所の売上が増え、そこで働く精神障がい者の工賃が上がる。この取り組みは、「ナースリー」の発行に合わせて2013年11月から3回予定している。

看護師は、白衣やシューズなど主に職場で使用するアイテムに年間平均2 万円を消費しており、購入方法として通販カタログを利用することが多いとされている。

「日精看 しごとをつくろうプロジェクト」の特徴は、精神科看護師が日常的に利用する通信販売を通して、精神障がい者が働くことを支援するという形式である。全国の精神科看護師の「いつもの買い物」が、全国の作業所の仕事を生み出し、精神障がい者の社会参加を促進する。

ノベルティ第1弾は、宮城県亘理郡の山元町共同作業所「工房地球村」(以下、地球村)で製造された固形発泡入浴剤「バスボム」だ。
地球村のバスボムは、原材料の混合、型詰め、封入梱包作業に至る全ての工程が手作業で行われる。既に4000個のバスボムが発注され、地球村ではその生産が急ピッチで進んでいる。

地球村で製造している様子

現場では、月間製造数をこれまでの5倍にしており、「これまで製造したことのないメンバーも担当するようになり、製造できるメンバーが増えた」という声や、「忙しいけれど、4000人のお客様が待っていると思うと嬉しくなるし、頑張れる」という声が聞かれている。発注額は120万円となり、昨年1年間のバスボム売上の1.2倍、地球村の総売上の1割に迫る規模となっている。