個人のツイートがきっかけで社会が動いた、いわば奇跡のような事例がある。民主化を求めた市民によるデモ活動「アラブの春」も、毎週金曜日夜に国会議事堂前で開催される「官邸前デモ」も、多くの若者を巻き込んだ背景にはSNSの力がある。社会を動かした、「奇跡のツイート」を紹介する。(オルタナS副編集長=池田真隆)

今年3月、東京ディズニーリゾート初となる同性カップルによる結婚式が行われた。式を挙げたのは、1年半に及ぶ交際を続けた増原裕子さんと東小雪さん。

式を挙げた、東さん(写真左)と増原さん

幸せな結婚式を挙げた二人だが、当初この結婚式はできないものであった。事の発端は、大のディズニーファンである東さんが東京ディズニーリゾートで結婚式を挙げられるか尋ねたことだ。

ディズニーからの返答は、「式を挙げるなら、新郎新婦の格好をしてほしい」というものであった。つまり、一方が新郎用の服を着、一方が新婦用の服を着てほしいという意味だ。

東さんが自身のツイッターでディズニーとのこのやりとりをつぶやくと、「夢の国でも、夢は叶えられないのか」、「多様性を認めるべきだ」など1000件を超える反応があったほどだ。

1週間後、二人は東京ディズニーリゾートから「ご希望の衣装で、つまりウェディングドレス同士で結婚式を挙げていただけます」との返事をもらった。米国のウォルトディズニー社にも確認をとった上での正式回答は、最初の回答から大きく変わった。こうして、日本のディズリーリゾート初の同性結婚式が開催されることとなった。

■見ず知らずの集団が、日本最大規模の復興支援組織に

年間約720万PVを誇る復興支援情報サイト「助けあいジャパン」を運営する公益社団法人助けあいジャパン(東京・港)は、SNSから誕生した組織だ。東日本大震災が発生した翌日に、同団体の創設者佐藤尚之氏が、松井孝治元官房副長官に官の情報を民のサイトで流す企画を提案する。

助けあいジャパンを立ち上げた佐藤氏

その場で承認され、復興庁と連携したサイト製作が始まった。ツイッターやフェイスブックで告知するとすぐに、広報やコピーライターなど情報産業分野の約300人のボランティアが集まった。

創設者はもちろん、他のメンバーの顔も知らないが、SNS上で連絡を取り合いながら、「サイト製作」「記事翻訳」「ソーシャルメディア対応」など各グループに分かれて作業を続けた。

現代表の野田祐機氏も、フェイスブックから誘いを受け参加し、佐藤氏との面識はなかった。参加した理由は、「復興庁と連携したサイト製作にかかわれる」からだ。ボランティアたちは仕事終わりや休日にコミットし、震災から11日後の3月22日にサイトがリリースした。
設立わずか1年足らずで公益社団法人の認定を受け、震災から2年半が経過した今でも、PV落ちずに年間720万を記録する。

■ソーシャルで署名集める

ネットで社会変革の賛同者を募る動きも活発化している。署名サイト「Change.org(チェンジ・ドット・オルグ)」だ。現在、196カ国で約5000万人のユーザーが利用している。

今年10月、猪瀬直樹東京都知事宛てに2020年東京五輪で葛西臨海公園をカヌーの競技場予定地と決めていることに対する反対署名を提出した。署名はわずか2週間で、15772人分が集まった。チェンジドットオーグ代表のハリス鈴木絵美さん(右から2番目)らで記念撮影

同サイトでは、個人やNPOが環境、人権、経済格差など様々な社会問題の解決のために、キャンペーンを立ち上げ、賛同者を募る。そして、政策提言や権利擁護などに繋げる仕組みだ。

2006年のサービス開始以来、バンク・オブ・アメリカがデビットカードの利用者に対し5ドル課金することを中止させたり、エクアドルの病院で「治療」を名目に、性的マイノリティーに対し行われてきた拷問を政府に調査させることに成功してきた。

昨年、日本にも誕生し、約18万人のユーザーが利用している。これまでには、上智大学の休学費を減額したり、ロンドン五輪で優勝したなでしこジャパンの帰りの航空便を男子と同じビジネスクラスへと変えた実績がある。