2013年11月8日、観測史上世界最大級とも言われる台風30号「Yolanda」(共通表記:Haiyan=ハイエン)は、フィリピンのビサヤ地方に大きな傷跡を残して大陸へ去った。当地フィリピンだけでなくカンボジアやベトナムでも死傷者を含む大きな被害が確認されている。

この度のYolandaはその強さ895hPa、瞬間最大風速は90mとも言われる。アメリカで大きな被害をもたらしたハリケーン「カトリーナ」を覚えていらっしゃる方も多いと思うが、それよりも更に強いというから驚きの一言である。

本連載では現地ビサヤ地域より大規模な被害の状況から草の根レベルの情報までを日本語媒体で伝える最新の連載とするとともに、日本からどのような支援ができるのか、筆者の国際協力の経験からその視点も交えてお伝えしたい。尚、連載執筆中に4つの被災地に赴く予定です。

第1回となる今回はセブ市内・マクタン島内の現状と風評被害について

というのも、日本でも今回のYolandaについては大きく報道されており、その多くが「セブ島近郊の島レイテ島」などと報じられているようなのだが、実は地理としては大きく離れているため当地への被害はほとんどない。

しかしこのような報道の過熱が風評被害の一因となっていることは間違いないだろう。東日本大震災に匹敵、またはそれ以上の被害が予想されている今回の災害では報道も加熱しがちであるが、また風評被害も同じように発生している。

竜巻によって倒れた木=フィリピン・マクタン

筆者は現地で旅行会社に勤務・在住しており、その会社PTNトラベル代表の海老原秀人の話によると現時点で例年の年末年始の渡航者は減るのではないかと予想しているそうだ。

PTNトラベルの海老原代表

これは日本の海外旅行関連企業でも同じような予想が聞かれるのことである。また弊社は現地でオプショナルツアーを催行しているが、台風の通過後、年末年始のツアー予約のキャンセルが相次いでいる。

本年12月15日にはこれまで1日1本であった日本からマクタン・セブ国際空港までのフィリピンエアラインがもう1便増える予定となっている。

しかし以前大阪からマニラへの便が増便された際、客入りが悪いことが原因でたった1カ月半のうちに就航中止となってしまった経緯がある。

「セブが盛り上がる契機となる直行便の増便(予定)のタイミングで、このような災害が発生したことは非常に残念。就航中止にならないことを願ってい。」セブという地に10年腰を据えて働いてきたからこそ、この時期での風評被害は痛手だ。

今回被災された地域は「セブ市内」ではなく、「ビサヤ地域のセブ島北部・レイテ島の一部・サマール島の一部」であり、当地マクタン島では市民も既に落ち着きを取り戻している。

観光に関してもツアー催行は1つのツアーが来週まで催行を見合わせている以外は全て催行されている状況で、少なくともピークシーズンとなる年末年始には全く問題なく観光を楽しんで頂ける。

しかし旅行業法の約款によりキャンセルチャージがかかるか、かからないかのこの時期に、駆け込むように渡航自体のキャンセルが相次いでいるようで、それに伴って現地でのツアーのキャンセルも入ってくる。

現状のセブ市内・マクタン島内は基本的に日常生活に問題はなく、当日こそ停電などが発生したものの現在は道路・電気・水道・Wi-FIなどのインフラなども機能している。

また当地では被災地への募金活動が始まったり、チャリティーTシャツの販売がネット通販で始まった。

世界でも有数のフェイスブック使用率となっているフィリピンでは、数えきれないほどの祈りと行動の様子が連日シェアされている。

幸いなことにセブ市内・マクタン島では被害がなく、むしろ緊急支援の必要性を感じて、人々は動き出しているのだ。日本と比べ賃金が低い当地でも、その中から少しでも寄付をしたいという声も多く聞かれる。

多くの方がご存知の通り、セブ市内やマクタン島の経済活動の多くは観光に関係しており、観光の急激なキャンセルは直接現地の方の生活に打撃を与えることとなる。近年では家具製造やIT関連企業、留学事業なども増えているが現状ではまだ観光が主要産業である。

どうか正確な情報から渡航の可否を判断してほしい。被災地に直接入って支援活動を行うことは難しくても、観光を楽しんでもらえるだけでも十分セブやマクタンのためになる上、収入を受け取った現地の方々もまた寄付を行うので、観光するだけで本当に大きな効果がある。

毎日日ざしが強く照りつけるここセブでは、多くの人が今も日本の方々を待っている。

次回はセブの北部マラパスカ島と、その道中となるメデジン街・ボゴの3カ所を訪れ、セブ島北部の現状と生の声をお伝えする。

*このレポートは、倉田拓人さんのブログ「フィリピンビサヤ地区災害情報」から転載しています。