伊藤忠商事と八犬堂は12月19日から、社会貢献型ギャラリーである伊藤忠青山アートスクエアで来年の干支の「羊」をテーマにした展示会を開く。作品を制作したのは、35歳以下の100人超の若手アーティストたち。若者の斬新な感性から生まれた羊たちが、2015年の門出を祝う。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
島田沙菜美さん(東京芸術大学大学院日本画専攻1年)は、「はなばたけ」というタイトルの作品を制作した。島田さんは、羊を描くために、上野動物公園まで本物の羊を観にいき、イメージを沸かせた。作品では、生命を表現するために、時の流れを絵にした。羊の鼻先には、枯れている花があり、それとは対照的に耳には、きれいに咲いた一輪の花が描かれている。島田さんは、「羊の角の巻き方も時間の流れをイメージしている。時の流れと生命の関係性を意識してみてほしい」と話す。
絵画が多いなか、切り絵に挑んだアーティストもいる。菊池玲生さん(東京芸術大学絵画科1年)だ。菊池さんは高校2年生から切り絵をはじめ、その魅力に惹かれているという。作品のタイトルは、「少女と羊の夢」。王子様を待つ少女をイメージした。作品では、ジャックのトランプが描かれているが、王子様を待つ夢を見ている少女という設定のため、王子様を連想した。
フリーのアーティストとして活動する菊池鮎子さんは、ほかの作品とは一線を画す絵を描いた。タイトルは、「怪羊」。原色のオレンジの背景に、薄緑色のかなへびが描かれている。かなへびの耳には、カタツムリが乗っており、ちょうど、羊の角のように見える。さらに、薄い金色でタンポポの綿毛を描き、見る角度によっては、かなへびが羊のようにも見えてくる。菊池さんは、「かなへびたちが、人が気付かないような遊びをしているところを描いた」と話す。
会場には、100人を超える若手アーティストが描いた、さまざまな羊たちが展示され、見るものを明るい気分にさせる。八犬堂の大久保欽哉さんは、普段ギャラリーやアート作品に馴染みのない人にも気軽に来てもらえるような展示構成を心がけたという。
今回呼びかけた若手アーティストは、大久保さんが普段開いている展示会で依頼したことがある若者たちで、全員と日ごろからメールでやり取りをする顔なじみの仲だ。大久保さんは、「来場者に楽しんでもらうためには、まずは自分たちで楽しむことにした」と話す。作品は壁に飾られているが、フェルトで作られたかわいい羊もところどころに貼られており、カジュアルなアクセントになっている。実はこれも作品の一つとして販売もしている。
会場となる伊藤忠青山アートスクエアは、画廊やギャラリーの多い六本木からも銀座からもアクセスが良いため、若手アーティストにとっては注目を浴びるチャンスだ。
大学で芸術を専門的に学んでも、アートのみで生計を立てることは非常に困難だ。日本ではアートを鑑賞する人に比べ、購入する人が多くないからだ。伊藤忠商事 広報部 CSR・地球環境室の猪俣恵美氏は、「ここに飾られることで満足するのではなく、自らお客様と接することができる、この場を利用して販売する努力もしてほしい」と若手アーティストにエールを送る。「経験を積み、ファンを増やして、アート業界を牽引していってほしい」と続けた。
展示会は、年内は12月19日から28日まで。年明けは1月5日から18日まで行っている。12月20日には、本物の羊が一日館長として展示会場に登場し、記念撮影ができる。また、同日に年賀状に羊を描くワークショップも行われる。1月12日もフェルトで羊をつくるワークショップを行う。
会期中は、若手アーティストも展示会場にいるので、作品をつくった思いについてもたずねることができる。
[showwhatsnew]