連載第4回「レイテ島の現状2 最大の被害を受けたTacloban(タクロバン)の今」

今回はセブ島北部よりも一層被害が大きいとされているレイテ島・タクロバンについての現状を報告する。

今回の台風30号Yolanda(共通名:ハイエン)では、レイテ島・サマール島が特に大きな被害を受けた。台風の中心が通過してしまったことも原因だが、その地理が特にタクロバンというレイテ島の右上の地域に甚大な被害をもたらした。

レイテ島・サマール島南部の地図。タクロバンは地図の中央やや左の湾の最も内側

レイテ島は南北に細長い島であるが、被害の大きかったタクロバンは島の右上に位置する土地で、セブシティーよりも大きくこの地域の中心的な町であるようだ。

タクロバンの拡大地図。内側に海が入り込んでいるエリアで高波が発生したと言われる

今回この町が甚大な被害を受けてしまった原因の1つには、湾の内側に位置するために海水が強烈な風によって押し寄せ、高潮がタクロバンに集中してしまったのではないかという一部の見解がある。確かに地理を拡大して確認すると、タクロバンが大きな湾であり、特に高潮を受けたとされる地域では湾内でも特に内側に入った地域であったことがわかる。

筆者たち一行はタバンゴを離れ、引き続きバランガイキャプテンと共にタクロバンへの約140キロの道を3時間かけて移動した。

タクロバンへ向かう道中のサンタフェという地域。この風景が延々と続いている

多くの家の屋根が壊れ、避難する場所も少ない

タバンゴからタクロバンにかけての移動を陸路で行った場合、現地に向かうにつれ被害が大きくなっていくことを感じることができる。タバンゴも大きな被害を受けているのだが、やはりレイテ島の東部の方がより被害が大きい。道中のサンタフェ辺りから被害状況は急激に悪化し、タクロバンに着く頃には一行は言葉を失った。

現在タクロバンまではオルモックからのレンタカーを使うか、関係機関の飛行機で入る必要がある。またタクロバンから避難のための飛行機が出始めているが、避難者用なので利用は控えたほうがいいだろう。

タクロバンに入るゲート。上部が壊れている

タクロバンに入ると状況は更に悪化する。押し寄せた高波は高さ7メートルとも言われており、海沿いの建物のほとんどが海水の圧力を受けたと思われ、陸側に傾いている。

一時的にタクロバンの住民はドーム型の建物に避難したが、支援物資が建物に届かなかっため一部の住民は諦めて自分の家に戻ってしまっており避難している人たちの動きが把握しきれていないのが現状だという。またタクロバン市役所には各国の国レベルの援助部隊や、国際的な規模のNGOがキャンプを形成している。しかし町全体が破壊されている現状では、むやみに手を付けても解決の糸口が見つかってこないようだ。

筆者たちはタクロバン市役所に向かい、日本の領事館の派出所に向かった。

住民が非難する建物。遺体の安置所になっている区画もある

タクロバン市役所は大規模な組織の一大キャンプ地となっている

市役所のテント。配給や報道など各種の活動が行われる

日本領事館の派出所には日本国廣州総領事館の鈴木孝領事が中国からいらっしゃっている。 写真は外務省領事局政策課領事体制強化室の伯耆田(ほうきだ)修室長と筆者と同行したスタッフが話している様子

タクロバン市役所には、UNICEFやWFPの他、世界各国のメディア、トルコなどの国家からの物資などが集まっている。その中にあるのが日本領事館の派出所で、ここでは日本国廣州総領事館の鈴木孝領事と、外務省領事局政策課領事体制強化室の伯耆田(ほうきだ)修室長にお話を伺った。

鈴木領事によるとタクロバンでは遺体の回収作業が進んでおり、表面上で遺体を目にすることは少なくなったそうだが、現在も毎日約30体ほどの遺体が収容され続けているそうだ。また治安の面でも不安があるため、不用意な行動は控え、日没後の行動は一切禁止としている。

物資の配給に関しては、ここ数日で確実に搬入が増えているという。市役所内のこの場所にはトルコからの米が山積みになって置かれていた。

各国からの支援物資の搬入は増えているが、配給がまだスムーズには進んでいないようだ

市役所の敷地内では支援団体やメディアがテントを張る

大きく曲がっているヤシとテント

市役所の敷地内も被害を受け、ゴミが集積されている

この後筆者たちはオルモックへ戻りセブに帰港したが、帰りの150キロ程度の道のりは一切の電気が止まっているため、日没後は真っ暗になってしまう。また所々にあるガソリンスタンドや教会などが壊れているため、ライフラインの復旧には数年〜数十年の時間がかかるのではないかと思う。

レイテ島内のほとんどが被災してしまっている状況の中で、誰が何をどのように実行していくかの支援の棲み分けと、復興までの中長期的な計画を立て、それを何度も更新しながら進んでく必要があると感じる。過熱するタクロバン内の報道の中で、タバンゴのような多くのレイテ島の他の地域は、支援が入らないだけでは情報の発信も行えていないため、復興に更に時間がかかってしまうのではないかと予想している。

教会の屋根が崩れている。ほとんどの住民はカトリックである

シェルのガソリンスタンドの看板。貝のロゴの部分だけが強風のため抜けてしまった

今回セブからオルモック、タバンゴ、タクロバンを経て戻ってきたルートは以下の通り。

セブ市内から出発
セブ第4港からスーパーキャットという高速船でオルモックへ。
http://www.supercat.com.ph/

スーパーキャットのチケットはセブシティーの各種モール内で購入可能。
空港のあるマクタン島であれば、ガイサノマクタンというモールの地下一階のカウンターで取得。
こちらは午後7時まで営業している。

尚週に2便ほど車のまま乗船できる大型のフェリーが出港しているので、現地入りを車で行う場合には日程をあわせる必要がある。

人だけが乗る船は往復で1500ペソ程度。
プロモレートが適用されている場合には1200ペソ程度になることもある。

【時刻表】
セブ→オルモック

セブ5:30 AM発  オルモック8:05 AM着 毎日運行
セブ11:00 AM発  オルモック1:30 PM着 毎日運行
セブ4:30 PM発  オルモック7:00 PM着 毎日運行

ただしどの日程でも遅延の可能性があるため、
セブに帰る当日に日本に帰る日程を組むのはおすすめできません。

オルモック到着後
下船するとレンタカーを使うように促されるが、現状で現地入りする場合には現地の関係者や知り合い及び警備の同行が必須と言える。
個人ができることは皆無に近いが、組織として渡航する場合には必ず現地と繋がりを持って動きが目に見えるようにしておくことが大事。

タバンゴまで約1時間

タクロバンまで約3時間

オルモックからセブ
同じくスーパーキャットを使った場合の時刻表です。

【時刻表】
オルモック→セブ

オルモック8:15 AM発 セブ10:35 AM着 毎日運行
オルモック1:45 PM発 セブ4:05 PM着 毎日運行
オルモック7:15 PM発 セブ9:35 PM着 毎日運行

こちらも遅延を想定して、余裕のあるスケジュールで行動して下さい。
次回は総括と今できる支援・協力についてまとめます。

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*このレポートは、倉田拓人さんのブログ「フィリピンビサヤ地区災害情報」から転載しています。