教育サービスの提供などを行うエデュケーショナル・デザインは4月10日、国内初となる科学系クラウドファンディングを開始した。サービスの名称はアカデミスト(academist)。研究費獲得のためのプラットフォームで、資金援助だけでなく、研究者と一般市民とをつなぐ場となることを目指す。(オルタナS編集部員=佐藤 理来)

アカデミストのサイト

アカデミストの記念すべき第1号プロジェクトは、京都大学研究員の岡西政典さんによる「深海生物テヅルモヅルの分類学的研究」だ。藻ではなくヒトデ科のこの生物、まだ研究が進んでない箇所が多い。DNA分析などを用いて厳密な分類を明らかにするという。

リワードにテヅルモヅルパーカーなどのグッズを用意し、研究者や研究テーマのファンの注目を集める。開始から着実に支援者を増やし、42日間を残しながらすでに79%を達成している。

今、研究の世界にもクラウドファンディングは広がっている。iPS細胞の研究で知られる山中伸弥教授も、2012年3月にジャストギビングで、フルマラソン完走という条件で研究費を募った。海外ではすでに、エクスペリメント(Experiment)ペトリディッシュ(Petridish)など科学系のクラウドファンディングプラットフォームが複数ある。

一方クラウドファンディングの影の面として、目標額を達成したものの、挑戦者の未熟さなどを原因に企画倒れに陥ってしまうケースもある。こうした企画倒れを防ぐためアカデミストではプロジェクト内容の審査には力を入れる。

研究経験を持つスタッフで構成された「審査委員会」を設置し、研究プロセスの正当性を吟味。計画が科学的な手続きを踏めているかどうか、研究の目的や手法などをインタビューしながら判断する。

アカデミストでは研究者の挑戦がメインになるが、研究目的であること、事前審査を通過すること、などの条件を満たせば一般の挑戦も可能。現在参加中なのは1組だけだが、挑戦に向けて準備中のプロジェクトはすでに数組あるそうだ。もちろん自然科学に限らず、人文系を含むすべての分野の研究を募集している。

クラウドファンディングである以上、研究者相手ではなく一般市民を理解させるプレゼンが必要だ。短いムービーの中で伝えるのは難しいが、凝縮された研究者の思いを知る場にもなる。すでに支援をした人の中にも「テヅルモヅル(の魅力)にやられた!」など研究対象に惹かれたコメントも見られる。

「メディアで紹介される研究者は一握り。世の中には、知的好奇心をくすぐったり、人々を驚かせたりするような研究テーマがたくさんあります。自分の研究を語りたい研究者に挑戦してもらい、資金を募るだけでなく、テーマや研究者の魅力を伝える場を目指しています」(アカデミストの柴藤亮介代表)

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