職業支援を行う大阪地域職業訓練センター(通称:A´ワーク創造館)(大阪市・浪速区)が昨年9月に、大阪市内の古民家の一室を借り受けて、クリエイターなどをつなぐ場として「コワーキングスペース往来」をオープンした。徐々に存在が知られるようになり、付近の住民の憩いの場にもなりつつある。さらに今秋から仕事帰りの会社員を対象とした「暇活」が始まったと聞き、訪ねてみた。(オルタナS関西特派員=穴吹美緒)
古い長屋や路地が残る空堀地区(大阪市・中央区)。築数十年以上ありそうな古い民家の2階に上がるとガラスの引き戸があり、それを開けると木の香りが鼻をくすぐった。8畳分のスペースの真ん中には大きな机が置かれており、本棚には、まちづくりやアートなど幅広いジャンルの書籍が並ぶ。
この日行われたのは、みんなで数種類のゲームをして楽しむプログラムだ。20代から40代までの男女9人が参加し、職業は会社員や自営業、大学生とさまざま。なかでも最も盛り上がったのは、ある村に人狼が紛れたという設定のゲームで、カードを使いながらの心理戦を楽しむ内容だ。
ゲームが白熱するにつれ、最初は初対面で会話がはずまなかった参加者も「あなたが狼ではないですか」「今の発言はおかしい」と積極的に発言するようになり、自然と打ち解けていくのが分かった。参加した会社員の男性は「ボードゲームをしたかったので参加した。今まで知り合えなかった人と知り合えた」と話す。
昨年9月、A´ワーク創造館はフリーランスや個人事業者のつながり作りを支援しようと往来を作った。発案者はA´ワーク創造館職員の梅山晃佑(うめやま・こうすけ)さん(32)だ。梅山さんは責任者も務めており、番頭さんと呼ばれる2人のデザイナーが交代で店番をしている。
一般的にコワーキングスペースは、同じ業種の人ばかりが集まるため、人の輪がなかなか広がらない。しかし、往来では「雑多な人が集まる」ことをコンセプトに、空間づくりなど工夫を凝らした。そのため現在ではフリーランスだけでなく、資格の勉強をする会社員やお弁当を食べにくる付近の住民も通っているという。
暇活は、仕事帰りの余暇を全力で有効に使ってほしいとの思いで梅山さんが先月から始めた活動だ。梅山さんは、往来でフリーランスと会社員が交流する姿を見たとき、普段出会わないからこそ、お互いを新鮮な存在として話せることに気付いたという。そこで往来に通っていたアーティストなどに活動の進行役を頼み、暇活をスタートさせた。
アート作品の鑑賞会や短歌作りなど計8つのプログラムがあり、平日の夜19時から月に1回の頻度で開催されている。ホームページから申し込みができ、1回500~1500円で参加できる。「居酒屋やカラオケに行くのと同じような感覚で『ちょっと時間が空いたから行ってみようか』と気軽に来てほしい」と梅山さんは話す。
往来がオープンして1年。ここで知り合ったことが縁となって、おむすびを食べながら空堀での交流を図るイベントや、長屋を利用したシェアアトリエも生まれているそうだ。「いろいろな人が往き来して、語り合ったり新しい仕事が創られたりする場にしたい」と梅山さんは話す。