リクルートワークス研究所は、女性リーダーを育成するための提言書を発表した。安倍政権は成長戦略の一つに女性登用を掲げるが、ジェンダーギャップ指数では世界105位と相変わらず実態は改善されない。提言書では、全部で16の提言が明記され、女性リーダーの育成を阻む原因や日本社会の「暗黙の前提」を明確に変更するための方向を示している。(オルタナS副編集長=池田真隆)
提言書の要旨は4つに分けられる。1つ目は、「入社からの5年間を有効活用し、27歳でリーダー職級に昇格させること」だ。結婚や出産など、女性のライフイベントを見越したうえで、早い時期からリーダーシップを鍛えるための訓練を必要とする。仕事以外の要素の制約が少ない入社直後に飛躍的な成長をさせるため、実績の高い人から順にリーダー職級に昇格させる。
2つ目は、30代に訪れる「キャリアの停滞期」にも、歩みを止めないサポートと人事評価制度である。多くの女性が結婚・妊娠出産・育児といったライフイベントを迎える30代は、企業内で中堅として活躍すべき時期とほぼ重なる。
この混迷期に仕事を通して成長することに集中できない女性は、後に能力不足・経験不足・覚悟不足と評され、管理職登用の選抜からもれ落ちてしまう。経験や実績をゼロリセットしない人事管理とスピードが必要だ。具体的には、約2年を一つの仕事の区切りとし、1モジュールとして管理する。2年×5モジュールで10年で管理職に登用する。
3つ目は、育児休暇期間は基本1年間で、「期限つき再就職オプション」などの検討をすること。育児休業中に実施する学習を、仕事経験を補完するものとして推奨する。
MBAをはじめ、会計・ファイナンス・法務・マーケティング・リーダーシップなどの講座の受講ニーズも十分にあると考える。このために、大学は短期で習得できるプロフェッショナル向けの講座の開発や、単科や科目群だけの柔軟な履修が可能なカリキュラム開発が必要となる。
配隅者の転勤などのやむを得ない事情で離職を余儀なくされる能力が高い人材には、「再就職オプション」を提供する手段も考えられる。
最後は、時間を最大限に有効活用する働き方の整備である。長時間労働を前提とした考え方から脱却し、「フルタイム=1日8時間の勤務」で仕事を完結させることを社員に対して要求していくべきとする。
在宅勤務の活用や「コアタイムなしのフルフレックス勤務」など、柔軟な働き方を実現する環境整備とそれを活用する社員の生産性の向上努力が必要。育児期間中だからといって担当職務の難易度を下げるのではなく、重要な仕事を引き続き担当できるように支援することが求められる。
同研究所が発表した16の提言に挙げた施策を実施すれば、15年後には男女の管理職昇進比率は同率になると予測する。それを前提にリクルートワークス研究所は、「2020年の女性管理職比率は16.4%、2029年では33.6 %」と試算する。