「臨時災害放送局」というものをご存じだろうか。これはFMラジオのイベント放送の一環で、災害情報を放送することを目的とした放送局である。福島県に本社を置くMTS&プランニングは、この臨時災害放送局に機材提供をおこなう事業を展開している。今回私たち学生(学生による被災地支援のための市民メディアプロジェクト支局=大石恭平、大武芽衣、中山晶子)は、同社の佐藤俊宏さんに取材し、震災当時の臨時災害放送局について話を伺った。(学生による被災地支援のための市民メディアプロジェクト支局=中山 晶子・武蔵大学社会学部メディア社会学科2年)

当時を一生懸命思い出しながら話してくれた佐藤さん

当時を一生懸命思い出しながら話してくれた佐藤さん

MTS&プランニングが臨時災害放送局に携わるようになったきっかけは、1995年の阪神淡路大震災だった。同社は震災直後に災害FM放送をおこなったという情報を聞き、ここで災害FM立ち上げのノウハウを調べた。そして2004年の新潟中越地震の際には、通信局と連絡を取り合い、早急に災害FM立ち上げの協力として、機材の貸し出しをおこなった。

今回の東日本大震災では、本社がある福島も被災した。しかし、それほど大きな被害ではなかったため、早急に動くことができたという。地震直後に放送可能な機材の数を確認し、通信局と連携しながら臨時災害放送局を設置する地域を決めた。佐藤さん自身も2日後には、宮城県気仙沼市や福島県相馬市などをまわって開局支援をしたそうだ。

MTS&プランニングが協力し開設された臨時災害放送局一覧

MTS&プランニングが協力し開設された臨時災害放送局一覧

インターネット網や光ケーブル網が発達した現代においても、災害時に有効な手段は無線網である。その中でもコミュニティFM放送は地域に密着した放送ができるので、災害情報の有効な伝達手段である。「災害放送をするために備えておいてください、と簡単には言えません。しかし災害時にはコミュニティFM放送という手段があるということだけでも知っておいてほしいです」と佐藤さんは語る。

今回の取材を通して、私たち学生にはなじみのない臨時災害放送局というものについて深く考えることができた。他の学生にもこの「臨時災害放送局」という仕組みを知ってもらいながら、もっとこの被災地支援のためのメディア市民プロジェクトに深くかかわっていきたいと思った。

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