2つの直営店と100を超えるフランチャイズ店を全国展開するスーパーホテル(大阪市西区)は1990年の開業以来、低炭素で持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めてきた。2011年には環境省から「エコ・ファースト企業」に認定され、他企業の模範になるべく、太陽光発電事業などの環境活動に力を注いでいる。「環境とお客さまへの最大限の気配りを心掛けています」と語る経営品質部課長の北川直樹さん(42)に、具体的な取り組みと環境に寄せる思いを聞いた。(聞き手・オルタナS関西支局特派員=高梨秀之)
――環境活動に取り組まれたきっかけは何でしょうか。
北川:1990年4月に熊本県水俣市で最初のホテルを開業したのがきっかけです。水俣病の公害問題に取り組んでいた市は、1992年に環境に関する基本条例や基本計画を策定しました。全国に先駆けてごみの分別収集を開始し、リサイクルや植林などを進めてきました。その独自の環境マネジメントシステムの認証を当社も取得し、市産のワインボトルを再利用したグラスをホテルで提供するなど協力を重ねるうちに、環境保全への意識が高まっていきました。
――活動の具体的な内容を教えてください。
北川:当社は省エネルギー型エアコンやLED照明、節水型シャワーヘッドの導入などにより、一泊あたりのCO2排出量を2001年度の9.27キログラムから現在4.92キログラムまで削減しました。
施設の経年劣化も緩和できる省エネルギー対策は、本業に強く結び付いています。「特別な空間」の演出を重視するあまり電気や水を必要以上に消費している多くのホテルと差別化を図るという目的もあります。ただ、節電や節水でさらに成果を出すにはお客さまのご協力が不可欠と考え、カーボン・オフセット事業「エコ泊」を2009年に始めました。
公式ホームページからご予約いただいた場合、削減が困難な4.92キログラムのCO2の50%分を、途上国の自然エネルギー事業や森林整備などに当社負担で投資することでオフセット(相殺)するプランです。年間に約100万泊、全体の32%のお客さまにご利用いただいています。
――地域での展開についてはどうでしょうか。
北川:来店された方だけでなく、出店した地域の住民の方全てをお客さまと捉え、町のシンボルのような存在になることで、地域活性に貢献することが目標です。2010年12月、愛媛県八幡浜市にフランチャイズで出店しました。
ホテルのオーナーは町おこしに意欲を燃やしています。幸い、毎日のように満室が続いたことで、近隣の飲食店も繁盛したと喜びの声をいただきました。直営店と違い毎日同じスタッフが対応するので、お客さまの嗜好を正確に把握し、より密な接客を実現できるのが隠れた強みです。今年9月からは三重県伊賀市で、中部電力を売電先とした太陽光発電事業も始めました。売電益は、地元の野菜を購入することで地域に還元しています。
――東日本大震災発生時の対応はどうでしたか。
北川:当社も出店していた仙台市や水戸市が大きな被害を受けました。震災直後には地域の方々に客室やロビーを無償で開放し、水や食料を提供したほか、3月の厳しい寒さのなかスタッフ全員で布団の収集などに奔走しました。当時妊娠6カ月で店舗に避難していた主婦の方から、後に「おかげさまで無事出産できました」とお手紙をいただいたときは、スタッフ一同大きな安心と励みを得ました。
――今後の目標を教えてください。
北川:環境への配慮だけでなく、ホテルサービスのさらなる向上も非常に重要な課題です。2007年に設置した「お客さま相談室」に寄せられたご意見を、今後も積極的に取り入れていきます。月間400件近い問い合わせの中には「朝食で用意されたおたまが左利きには扱いづらかった」といった盲点を突かれる内容が多くあります。お客さまの小さなご要望から環境に関する大きな問題にまで対応し、満足と安心を提供できるホテルをめざし続けます。