職歴や学歴などでなく、 「人物本位」で企業とのマッチングを図るサービスがある。リクルートキャリアの就職Shop(ショップ)だ。これまでの登録企業は約5200社。求職者にキャリアコーディネーターが付き、本人の適性に合った求人を紹介する。紹介する企業は全て、就職Shopが独自取材した会社であり、書類選考はなく、面接から始まる。同サービスを利用した人は、学歴などに関わらず、未経験の業種・職種であっても内定を獲得している。(オルタナS副編集長=池田真隆)

就職Shop推進部に所属する西山マネージャー

「自分に自信がなく、やりたいことが分からない人にこそ利用してほしい」と話すのは、就職Shop推進部の西山和広マネジャーだ。同氏は、将来が上手く描けず就職活動に行き詰った多くの若者と面談してきた。

面談してきたなかには、就職が決まらず大卒後アルバイトをしてきた人やプロサッカー選手を目指していたが、途中で怪我をしてしまった人など、就職活動のやり方自体がわからないという若者たちもいたそう。

そんな若者と話していると、それぞれに個性があることを確信した。「アルバイトをしていたから、履歴書の職歴欄が空白になってしまい、面接で指摘される。しかし、バイト先では頼れるリーダーとして活躍していた等、履歴書には書かないけれども、会って話して初めて分かるその人の持ち味が誰しもありました」(西山マネジャー)

就職Shopで就職が決定した人の内、4人に3人が正社員未経験者だが、そこに中小企業の採用担当者は魅力を感じているという。「経験よりもポテンシャルに魅力を感じる」、「一から育てることでその可能性を大きく伸ばしたい」など、即戦力となる人材よりも、長期的に見て戦力となる人材を望んでいるケースも多い。

しかしながら、大企業に比べ、中小企業の情報量は少なく、そもそもの選択肢から外れてしまっている場合も多い。西山マネジャーは、「大手だけが安心して働けると思い込んでしまっているので、従業員規模感での雇用のミスマッチが起きる」と訴える。

ワークス研究所の大卒求人倍率調査では、2014年3月卒業予定の大学生・大学院生の求人倍率は5000人以上の従業員を抱える企業では0.54倍となっているものの、従業員300人未満の中小企業では3.26倍となっている。

「大企業と中小企業のあいだには情報格差があり、メディアなどへの露出の少ない中小企業については、正しい情報を知らなかったり、場合によっては、存在自体認知されていないケースも多いです。なので、求職者は年収や勤務体系など、表面的な情報だけを読み取ることで、マイナスなイメージが先行して、偏見を持つようになる場合があります。そのため丁寧に中小企業の客観的な情報を伝えることで、魅力を感じてもらうことを心がけています」(同)

中小企業には、大手にはない少人数だからこその強みがある。社長と距離が近いことや、若くして責任のある仕事を任せてもらえることなど。さらに、組織の意見よりも、社員一人ひとりの意見を優先し、個性を伸ばすことに重きを置く企業もある。

就職Shopができたのは、2006年。きっかけは、同社が内閣府・経産省・文科省・厚労省、4省庁合同の若年者就労支援事業を受託したこと。具体的には、大阪、岐阜、千葉の3地域の受託を受けて、就職がなかなかうまくいかない若者を支援するジョブカフェ事業に携わったことにある。

そこでは、1日に200人を超える若者たちとキャリアについて話をしたが、なぜ今就職していないのか不思議に思える若者が多かったと振り返る。じっくり話してみると、理由としては、2つあった。1つは、働いたことがないので、履歴書に空白ができ、毎回エントリー時に落とされ、自信喪失してしまったこと。もう1つは、就職活動に関する知識がなく、やりたい職種も見つからないことだ。

この問題を解決するためには、エントリーの仕組みに工夫が必要だった。そこで、企業と求職者の間にキャリアコーディネーターを介在させ、書類選考なしで人物本位の選考を実現する就職Shopが立ち上がった。

同社には、人と深くかかわるDNAがある。就職Shopで大切にしていることは、否定しないことだ。その人の持ち味を知り、その個性に合った会社を紹介することを意識している。

西山マネジャーは、「なにが長所でなにが欠点か、というのは基準や視点によって異なります。大事なのは否定して変えようとするのではなく、その人の持ち味と仕事のイメージを接続する事なんです」と話す。「人によって幸せのあり方は違うけれども、自分自身が活かせる場所で、誰かの役に立つことは幸せなことだと思います。もしこれまでのやり方や将来に迷われる事があれば是非、就職Shopにいらしてください」。


西山和広:
1989年4月(株)リクルート新卒入社、人事採用担当。1995年7月北海道支社へ異動。人材サービス営業、「ケイコとマナブ北海道版」編集長を経て、2003年10月ジョブカフェ事業に携わる。2006年4月就職Shop創業以来現職。

就職Shop