前回の記事ではファイナンシャルプランニング業務を行う「財コンサルティング」(大阪市北区)のファイナンシャルアドバイザー、平山哲也さん(54)に資産形成についてお話を伺いました。第二弾となる今回は、NISA(ニーサ)を資産形成の面から考えます。NISAとは新しく購入した証券や投資信託の年に上限100万円分から得られた所得を対象に5年間、本来20%かかる税金が免除される制度で、2014年1月から新しく導入されます。平山さんは「自分の資産は自分で守るという意識を持ち、考える習慣を持ってほしい」と話します。(オルタナS関西支局特派員=小林欣広)

「NISAが本当に自分のライフプランに合ったものかを考えてほしい」と語る平山哲也さん

――NISAとはなんですか。

平山:少額投資非課税制度の略称で、新しく購入した証券や投資信託を対象に毎年上限100万円分から得られた配当金や売買益の税金が5年間、非課税になります。2014年から23年までの10年間のうちに、銀行や証券会社などの金融機関でNISA口座を開設すれば、この制度を使うことができます。ただしNISA口座は一人一口座まで、一度開設したら4年間は別の金融機関に移すことができない、という制限があるので、始める前には十分に情報収集したり金融機関に相談をしたりしながら、慎重に選択しなければいけません。

――NISA口座におけるメリット、デメリットはありますか。

平山:最大のメリットは非課税であることです。そしてデメリットも複数考えられます。まず、NISA口座で損をしても、他の口座で利益が出ると、その分の所得が増えたと判断され、税金を支払わなければならないことです。本来なら、複数の口座を開いて証券取引をして生まれた利益と損失を合わせて、所得として計算します。しかしNISA口座は、その計算に含めることができません。NISA口座で損をし、他の口座で得をして所得が差引ゼロになった場合でも、所得があったと判断されて税金を引かれます。また、長期的な資産形成の考え方にNISAがマッチしないこともあげられます。

――具体的にはどういったことでしょうか。

平山:私たちは資産形成を長期的なライフプランを達成するための手段だと考えています。例えば子供2人を大学まで卒業させたい、40歳までに家を建てたいなどです。こういった、お金が必要な目的を達成するためには資産形成が必要なのですが、人それぞれ期間も時期も異なります。しかし、NISAは国が一律に定めた時期の5年間だけ非課税にする制度です。これは資産形成を促しているのではなく、その5年間で資金を運用してくださいと、言われているに等しいのではないでしょうか。それでも非課税は投資によって資産形成をする人にとっては大きなメリットなので、NISAに興味を持って始める前に、十分に情報を収集し、資産形成について自分で考えてほしいです。そういった、きっかけとしてNISAという制度に期待をしています。

――これからNISAで投資をしたいと思っている人へのアドバイスをお願いします。

平山:自分の資産は自分で守るという意識を持ってほしい。日本ではこれまでお金について話をすることはいやらしい、というイメージが親から子へと再生産されてきました。現在も多くの人が資産形成や投資は、楽をしてお金を稼ぐこと、というマイナスのイメージを持っており、資産形成はもっぱら手堅い銀行に任せっぱなしでした。NISAも国や証券会社が良いと言うから始めるのではなく、自ら投資や資産形成の意義、NISAのメリット、デメリットをきちんと考えたうえで選択してほしい。

――今後の資産形成の展望について教えてください。

平山:資産形成はライフプランありきだ、ということを訴え続けていきます。NISAには不安な点もあると思いますが、今まで資産形成について考えてこなかった人たちが、資産形成や投資について考え始めるきっかけにしてほしい。我々はそれに応えて、より健全な資産形成の知識を伝えていきます。資産形成を通して、人生の目的に近付くイメージを育み、普段の生活にもハリのある、充実した人生を送ってほしいと思います。