「エシカル元年」。確か2013年初頭、そう何かに書いた気がする。実際、去年のエシカル・ビジネスに携わっている起業家の皆さんの活躍には目を見張るものがあった。

まずエシカル・ジュエリーの草分け、HASUNA代表取締役白木夏子さん。2013年1月1日にNHK Eテレ「ニッポンのジレンマ」に出演すると、すぐに世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席。2月には、『世界と、いっしょに輝く―エシカルジュエリーブランドHASUNAの仕事』 (著者:白木夏子、聞き手:生駒尚美、編集:川口恵子/ナナロク社/2013年2月15日)を出版。

HASUNA代表の白木夏子さん

3月には伊勢丹新宿店に常設店舗を開店する。新聞や雑誌などで見かけない事はなく、11月には南青山本店を表参道に移転、さらなる販売拡大を図っている。

一方、世界最高峰のエチオピアン・シープ・レザーをふんだんに使ったエシカル&リュクスなバッグの製造・販売を手掛ける、andu amet(アンドゥアメット)の代表取締役鮫島弘子さんも負けてはいない。APEC女性と経済フォーラム2013」にて、若手女性イノベーター賞を受賞した。

エチオピアの工房で働く鮫島弘子さん(写真左)

鮫島さんといえば、日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2013年キャリア・クリエイト部門に入賞したが、今回は、日経ビジネス・「次代を創る100人」にも選出された。2013年6月には、日本政策投資銀行による〈女性新ビジネスプランコンペティション〉でHigh-spirits賞を受賞した。

あの「カンブリア宮殿」もandu ametを取り上げる予定だ。(2014年1月9日(木)20:00〜 テレビ東京系列にて放送予定) 日本に常設店舗こそないが、六本木ヒルズや横浜そごうでポップ・アップ・ストアを年数回オープン、来場者は引きも切らない。オンライン・ショップも好調だ。まさに、「ソーシャル・ファブリケーション」の実践者として驀進中である。

また、名古屋のエシカル・ビジネスの草分け、エシカル・ぺネロープ代表取締役原田さとみさんの2013年の活動も注目すべきものがあった。フェアトレードタウンなごや推進委員会の代表でもある原田さんは、名古屋で行われる様々なエシカル関連イベントの仕掛け人でもあり、実践者でもある。

名古屋を中心に活動する原田さとみさん

5月の「世界フェアトレード・デー・なごや2013」や、10月の「COP10開催3周年記念イベント エシカル・デー・なごや2013」。そして、11月のESD(持続可能な開発のための教育)ユネスコ世界会議1年前イベント「あいち・なごやESDフェスタ」でも、フェアトレードのファッション・ライブ・トーク・マルシェを展開するなど、まさに獅子奮迅の働きぶりをみせた。

彼女たちの活躍を間近で見ていて大変頼もしく、応援し甲斐があると感じているのは私だけではあるまい。一方で、大手メディアが「エシカル」という概念をあまり積極的に取り上げない事に違和感を感じている。

2013年7月に日本テレビが、開局60年特別プロジェクトとして、面白いアイデアで世界を変える社会貢献事業に焦点をあてた番組、「PEOPLE MAGNET TV」を放送したが、第2回は今年2月ということだ。他にエシカル・ビジネスを取り上げた例を余り見ない。

株式会社デルフィスのエシカル実態調査(2012年7月)によると、エシカルという概念の認知度は未だにわずか13%だという。(その他は、エコ96%、ロハス77%、フェアトレード50%、サステナビリティ28%)ここ2~3年で浸透度はほとんど変わっていない。

「倫理的な」という概念自体が難解なのかもしれないが、日本人の中で、「倫理的に正しい消費行動」が根付きにくい一因に、新聞・テレビが積極的に取り上げない、という事実が挙げられよう。

こうした現状を我々は認識しなければならない。同時に、我々独立系メディアが発信力を一層高める事が、エシカル・ビジネスに携わる多くの起業家を応援する事になる、と年初、改めて実感した。(寄稿・Japan In-depth編集長、元・フジテレビ報道局解説委員=安倍宏行)

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