太平洋戦争での敗戦から8年後に作られた映画「ひろしま」をご存知だろうか。広島に投下された原爆の惨状を広島市民8万8千人の無償協力のもと、克明に映し出した衝撃作である。その映画が1月30日に茅ヶ崎で公開される。(オルタナS副編集長=池田真隆)

60年のときを超えて、幻の作品がついに公開する

同映画を制作したのは、日本教職員組合。自らも広島で被爆した教育学者・長田新が編集した文集『原爆の子~広島の少年少女のうったえ』を、八保安太郎の手によって映画化された。

特徴的なのは、この映画に広島県教職組合と広島市民が全面協力した点だ。撮影では、多数の高校生、教職員などが無償のエキストラとして出演し、その数は8万8千人に及ぶ。

映画で使った戦時中の服装や防毒マスクは広島県下の各市町村の住民から寄付され、4000点が集まった。

原爆投下時に、厚いキノコ雲に覆われた広島の街ではどんなことが起こっていたのか。敗戦のわずか8年後に作られたことで、その時のことを克明に描き出している唯一無二の作品である。

1955年ベルリン国際映画祭では長編映画賞を受賞した。なぜ、50年以上も前の映画が今になって脚光を浴び出したのか。それは、2011年の福島第一原発の事故がきっかけだ。

福島の事故以来、この映画が再び上映される機会が多くなった。母親の亘征子さんが、原爆孤児の役で出演している多田知子さんは、2013年に初めてこの映画を観た。

「覚悟はしていましたが、つらい映像であり、それでも実際はこの何倍も何十倍も悲惨な状況であったろうことは容易に想像がつき絶望的な気持ちにもなりました」と話す。

そして何より、敗戦8年後にこの映画ができたことに、当時の人々の意志の強さと生きることへのまっすぐな気持ちを感じとったという。
映画には、松井一寛広島市長もコメントを寄せる。「この映画で国内外に核兵器廃絶と世界恒久平和を訴えるメッセージを発信してくださることを大変強く思っている」。

日時:2014年1月30日(木) 1部13時~
              2部17時半~
定員:350人
入場無料
お問い合わせ:茅ヶ崎市文化生涯学習部男女共同参画課 TEL:0467-57-1414