俳優・伊勢谷友介が立ち上げたリバースプロジェクト(東京・港)には、衣食住やアートなど様々な分野のクリエイターが集まる。同社のファッションプロデューサーで伊勢谷友介のファッションスタイリストを務める葛西信博さんに、これからのモノづくりのあるべき姿とは何か聞いた。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆)

ファッションのあり方について話す葛西信博さん

——リバースプロジェクトが考えるファッションにおけるモノづくりのあるべき姿を教えてください。

葛西:ここ数年でファストファッションが世の中の主流になり、安くて、デザインが良いものが、簡単に買える時代となってきました。

しかし、同時に失っていることも沢山あると考えています。ちょうど4年前程、古くからの仲間が立ち上げたリバースプロジェクトの理念と出逢いました。現代社会において「かっこいい生き方・働き方」とは何か…彼らの理念に共感してリバースプロジェクトのメンバーとなりリバースの「衣」部門である「HATCH YOU」を立ち上げました。

その後、Lee JAPANとのリユースブランドとして業界でも注目を集めている「Lee-BIRTH PROJECT」、オーガニックコットンなどエシカル素材と国内生産をコンセプトに掲げた「PIED PIPER REBIRTH PROJECT」などのプロデュースを手掛けています。この3年程の活動を通じて大切なことが3つあると気づくことができました。

1つは、世界にもたくさん素晴らしいモノづくりがあるように、ここ日本にも継承していかなければいけない伝統的なモノづくりがたくさんあること。これは、国内生産や伝統技術の継承という活動に繋がっています。

2つ目は、世代を越えて感動できるモノづくりでありながら、フレッシュな感覚を纏ったサステナブルな物事。現代のフレッシュな空気感として衣食住、アートや音楽などライフスタイルのすべてにおいて、豊かなこと、大切なことが何であるかを改めて考えるようになりました。ここ数年のライフスタイルショップのオープンラッシュから、ファッションはファッションだけのアプローチだけではないことに気付いた方も多かったと思います。

最後の3つ目は、ファッションを通して、環境問題を解決していくことです。ファッションが持つ可能性やクリエイティビティを入口に、環境問題にもっと興味を持ってほしいといった願いから、環境に配慮したストーリー性のあるモノづくりを目指し、日々活動しています。

——エシカルファッションは環境に配慮し、ストーリー性もあるのですが、デザイン性や種類が乏しく、まだまだメジャーな存在感を発揮できていません。

葛西:エシカルファッションが、まだまだメジャーな存在になれない原因にはまず商品流通の少なさがあげられます。

つまりエシカルな商品を選択できる環境が売場に設定されていないということ。食品や美容などに比べて特にファッションは、かなりの遅れをとっていると思います。エシカルなモノ、そうでないモノと選択できる売場が増えれば消費者もそれぞれの価値観で自由に選択することができると思います。

私たちは、この課題を受け止め、多面的な方向からモノづくりを見つめ直しています。

リバースプロジェクトの服づくりには、「ハイセンスでモード、かつエシカル」をコンセプトに、衣部門「HATCH YOU」として8つのミッションを掲げ、プロダクトリリースを行っています。

その8つのミッションとは、「天然素材のサステナブルな供給を創出」、「エシカルな新素材の市場進出を手助け」、「リサイクル素材利用の活性化」、「日本が誇る伝統技術・工芸をサポート」、「雇用の創出につながる、ものづくりを推進」、「廃棄処理される素材に、新たな価値を付加」、「環境負荷の少ない、もの作りの場の拡大」、「MADE IN JAPANのブランド力の強化」など、どれもエシカルなモノづくりとリンクしています。

——リバースプロジェクトでファッションに関する今年の動きを教えてください。

葛西:年内には、ビジネススーツやワークウェア、学生服などエシカル素材を推進する新たなプロジェクトの発表が予定されています。

ソーシャルウェアをエシカルと結び付けることにより、様々な変化を生み出していきたいと願っています。「Lee-BIRTH PROJECT」の新たなリユースプロダクトのリリースや「PR BAR/ PIED PIPER REBIRTH PROJECT BAR」と連携した「PIED PIPER REBIRTH PROJECT」のプロダクトリリースも進行中で5月中には、先行受注会も開催します。一般の方々にもご来場いただけるよう現在準備しております。

——オルタナSの読者はエシカル思考を持った若者たちです。メッセージをください。

葛西:自分の価値観で、良いものがなんであるかを見つけてください。この感覚がわかっていると、物事に対する価値形成にとても役立つと思います。

そして自分なりの感覚で、良いモノを見つけたら大切に使い続けてください。一度、気に入ったモノは何度も買い直しても良いと思います。

沢山のモノが溢れているのに心の底から気に入るモノが、滅多に存在しないことに気づくでしょう。今一度、豊かさとは何かを考えてみて下さい。そして皆さんのエシカルな選択権を有効に活用して下さい。


リバースプロジェクト

葛西信博:twitter
REBIRTH PROJECTファッションプロデューサー。10代よりファッション界に身をおきバイヤー、プレス、スタイリストを経験。2009年より、REBIRTH PROJECT「衣」部門 HATCH YOUプロデューサーとしてファッションフィールドをベースに、PIEDPIPER REBIRTH PROJECT、Lee BIRTH PROJECTなど様々なプロデュースを手掛けエシカルライフを提唱している。また俳優 伊勢谷友介を筆頭に芸能人やミュージシャンの衣裳も数多く手掛けている。