2月1日夜、湘南乃風の若旦那が都知事選に立候補している家入一真氏の応援演説に駆けつけた。家入氏のネットを使った選挙運動について、「ネットができない人も置き去りにしないでほしい」と訴え、渋谷スクランブル交差点の寒空の下、約7分間ほど熱いメッセージを送った。芸能人はおおむね政治的発言を避ける傾向にあるが、この日の若旦那には、何の迷いもなかった。(オルタナS副編集長=池田真隆)
「寒いけど、心は熱いですか」――若旦那のスピーチはこの一言から始まった。猪瀬前都知事の辞任で、急きょ決まった今回の都知事選には失望したと、若旦那は話した。
「辞めた理由もイマイチよく分からないし、すぐに小泉さんが出てきた狙いもよく分からない。都知事選は国政ではない。国のため、日本経済の発展のために東京を犠牲にする政治はおかしい」と、訴えた。
2020年に開催が決まっている東京オリンピックについても触れた。閉幕後、大会のために建設した施設の維持費に苦しむオリンピック不況を迎えてきた過去があることから、「オリンピックで経済を活性化させるのは良いが、閉幕後の東京もしっかりと考えてもらいたい。壊して、作って、壊しての繰り返しは見たくない。東京には、汚い大人たちもいるが、畑も町内会も人情もある。世界に誇れるカッコいい街だ。もっとそのカッコいい所を、世界にアピールしてほしい」。
若旦那は湘南乃風の一員として、神奈川は湘南を活動拠点とするが、生まれは東京・世田谷で世田谷育ちだ。湘南と出会ったのは20歳のころ。「東京の流れの速さ、非情さ、すぐ壊しては再生するところ。これらに疲れた。たくさんの人と出会って、良い人もいれば汚い人もいた。夢が何か分からなくなり、湘南の海で自分を見つめなおした」と話す。再び東京に戻ってきたのは、音楽でメジャーデビューへ挑むためだ。
若旦那は集まった若者たちに、「この中で、東京好きな人はどのくらいいるの。東京ってカッコいいよね。だけど、ちょっと冷たいって感じてる人はいるんじゃないかな」と質問を投げかけた。
「よく東京は冷たいと聞くけど、おれはそんなことないと思っているよ。めちゃくちゃコミュニティを大事にしているから。だけど、そんな好きな東京が破壊されていることに対して、何も言えないでいる。国のため経済のための犠牲の場になっているから。本当に都民の声を聞いている政治家はどこにいる?」(若旦那)。
家入氏が出馬会見で、「政策はない」と発言したことについても、「度胸がある」と話した。「ネットでみんなから意見を集めた結果、2万3千件の声が集まっている。この集まった声から、責任を持って実行できる案件を吟味する。政治家からの一方的な押し付けではなく、しっかりとおれたちの声が届く仕組みだ」。
これからの都知事含めて政治家に求めることは、「ハート」だと言う。「(家入氏の)スタッフには、スーツを着ていない金髪の若者だっている。けど、大切なことは外見じゃないし、それらしい言葉でもない。みんなも、もう分かっているでしょ。そんなのが意味ないことを。ハートだけを求めている」。
最後に、ネットを使った選挙運動を展開する家入氏に対して、「ネットができない人たちも置き去りにしないでほしい。ネットで声を拾えない人にも耳を傾けてほしい」と要望した。
東京都選挙管理委員会は1月27日、期日前投票が3万8453人と発表し、その数は前回選の約10倍に及ぶ。家入氏はネットを中心に若者から支持され、28日に行った事務所開きでは350人を超える若い支持者が集まった。
ツイッター上では、「これまで政治に関心がなかったが、初めて政治を楽しいと感じられるようになった」という投稿が若者から多く見られる。これまで動かなかった層が、初めて動きだし、今回の選挙が大きな分岐点となりそうだ。
公職選挙法では、未成年者が特定の候補者を支持するような選挙運動への参加、さらには情報をSNS上でシェア・RTなどした場合、「禁固1年以下または30万円以下の罰金」が科されるようになっているが、せっかく政治に興味を持った若者を遠ざけるこの法律自体、「若者の投票率が低い」と嘆く大人たちによってつくられたものだ。
若者たちの声が政治に反映されだすと、世の中はどう変わるのだろうか。良い方向か、悪い方向に行くのかは誰にも分からないが、若旦那のスピーチの締めの言葉は「(家入氏の出馬で)都知事選が楽しくなってきた」として、政治に参加できる仕組みをネガティブな方向にはとらえていない。