NPO法人ETIC.(エティック)は3月7日、東京・三田のNEC芝倶楽部で「社会起業塾イニシアティブフォーラム2014」を開いた。同団体とNECが運営する社会起業塾の卒業生や現役スクール生ら10人以上が登壇し、社会的課題を事業で解決していくビジョンを語った。一つのトレンドとして見えてきたのは、子ども支援に取り組む団体が増えてきたことだ。(オルタナ編集委員=高馬卓史)

教育格差の解決に挑む公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの今井悠介代表

同フォーラムでは、全部で13人の社会起業家たちが登壇した。日本企業の社員を途上国に派遣する「留職」事業を展開するNPO法人クロスフィールズの小沼大地代表や児童養護施設の学習支援を通じて子どもたちの社会保障充実を目指すNPO法人3keys(スリーキーズ)の森山誉恵代表、コスメによる途上国の女性自立支援事業の一般社団法人Coffret Project(コフレプロジェクト)の向田麻衣代表らだ。

そのなかでも、キャリアや学習、貧困支援など子どもを助ける事業に取り組む数は、半分以上に及んだ。

「日本の教育格差」を解決する学校外教育を立ち上げた者もいた。公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの今井悠介代表だ。今井代表は、「2009年度の厚生労働省の調査では、日本の子供の貧困率は15.7%にまで上昇し、約6人に1人が貧困状態に置かれている」と訴えた。

「しかも、2008年度の文部科学省の調査によれば、世帯年収が200~400万円の家庭と700万円以上の世帯年収の子供たちの学力の差は明らか」

さらに、貧困は次世代に連鎖し、「親の経済的貧困が教育格差が子供の低学力・低学歴につながり、不安定な就業・社会的排除」の悪循環が生まれている現状を問いかけた。

その解決のため、今井代表は被災児童や生活困窮家庭の小学生から高校生に、塾や習い事などの学校外教育サービスに利用できる「バウチャー」(クーポン券)を提供している。

同団体では、企業や個人から寄付を集めバウチャーを子どもたちに提供。子どもたちは塾や習い事をそのバウチャーで支払う。そして、教育事業者は、チャンス・フォー・チルドレンにそのバウチャーを送付・料金請求をするというシステムだ。

これは、かつて話題になった「地域通貨」に近い考え方と言えよう。日本では下火になってしまったが、地域独自の通貨を発行して、地域内で互いに「サービスの贈与」をした。地域が自立した相互扶助をより強めようという考え方で、基本的には、人的サービスを基盤にしたものだ。「通貨」発行者が寄付を集めて、その「通貨」の代金を支払うというものではないが、その延長線上にある。

ユニークだったのは、今、生活保護者が210万人、ニートと呼ばれる人々が63万人、合わせれば、273万人もいるのに対して、年々、急減し平均年齢も65歳を超えて、深刻な後継者難に陥っている農業従事者は239万人。ならば、生活保護者やニートに農業をしてもらおうと、その橋渡しをしているNPO法人農スクールの小島希世子さん。

小島さん

小島さんは、ホームレスの人々を訪ね歩いた結果、「路上には、働く意欲や体力がある人が埋もれている。畑は、自分への自信を取り戻す場になります」と訴える。「自然に向き合い、収穫という確かな成果を手にすることで、働く喜び、自立した生活が取り戻せる」と。

社会起業家のミッションは、社会的弱者の救済であることは間違いない。しかも、世界各国、先進国といえども国家財政は危機的状況で、教育や社会福祉に回る公的資金は年々先細っている。そこで補完的役割として立ちあがったのが社会起業家たちだ。

今年も、様々な社会起業家たちが誕生している。多難な道かもしれないが、ミッションを胸に、果敢により良き明日の社会を築いてもらいたい。