福島県浪江町は4月4日、2014年度末までに町民全世帯にタブレット端末を配布すると発表した。狙いは、東京電力福島第一原発事故の影響で全国各地に避難している町民同士の情報交換と、同町からの情報発信の強化だ。民間からエンジニアを公募し、タブレットの利用率を上げるアプリーションの開発を行う。(オルタナS副編集長=池田真隆)

行政に民間のアイデアでイノベーションを起こす

タブレットを配布するのは浪江町に住民登録している約10000世帯だ。65歳以上がおよそ3割に及ぶので、使い方のレクチャーが課題となる。タブレット利用率を上げるために、キーとなるのが、アプリケーションだ。行政情報や安否確認、町内ライブカメラ、福島県地方紙の閲覧などを一括でできるようにするという。

アプリケーションを開発するエンジニアは民間から3人公募する。IT技術で地域課題の解決をする一般社団法人Code for japan(コード・フォー・ジャパン)と連携し、同日からサイト上で募集を始めた。採用された3人は同町に、2014年4月から2015年3月まで、派遣される。

コード・フォー・ジャパンは、スキルや経験を持った人材を民間から集め、一定期間行政に派遣することを「フェローシッププログラム」と名付ける。日本で同プログラムを実施するのは初となる。同団体の関治之代表は、「日本版のフェローシッププログラムの模範となる事例をつくりたい」と意気込む。

同プログラムは、米国の非営利団体コード・フォー・アメリカが2011年にフィラデルフィア、ボストン、シアトルの3都市で始めたものだ。スマートフォンで地域の課題を記録し、自治体が解決策を考えるアプリやタウンミーティングの参加者が少ない地区に、ウェブを活用することで効率的に市民の声を集めたサービスなどを続々と開発した。民間のアイデアが行政にイノベーションを起こしたことが評価され、2013年には10都市に拡大した。

浪江町は、3年を経過しても、今なお全町避難を強いられている。馬場有・浪江町長は、「こうした困難な状況の中で、町民の絆をなんとか維持し、再生したい。町民協働とテクノロジーの力でこの難局を乗り切っていきたい」と話す。

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