首都圏で活動していたバンドマンたちが集団で移住し、地域を活性化している。移住先は、愛媛県松山市からフェリーで1時間の場所にある瀬戸内海の離島「中島」だ。昼は柑橘栽培をし、夜は仲間でジャムセッションをする。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

イノシシを山から下ろす農音の田中代表

この動きを起こしているのは、2011年に首都圏のバンドマンたちで結成されたNPO農音だ。メンバーは東京・町田市を中心に首都圏一円と中島のある松山市に分かれ、総勢で40人ほどになる。中島では移住者の住居や農地の確保、みかん栽培を行い、東京にいるメンバーは、ライブ活動で中島のPRをし、販路開拓を行う。

同団体は2011年に設立し、わずか3年で25人が中島に移住した。中島は島の全域に柑橘畑が広がり、海岸線の総延長は25キロに及ぶ。かつて15000人いた人口も、現在では3000人にまで減った。高齢化率も55%となり、主力産業である柑橘栽培の後継者不足の問題が深刻だ。

島のPRソング「わ」を演奏する農音メンバー(写真右端が田中代表)

農音の田中佑樹代表(34)は2011年に中島に移住した。愛媛県松島で生まれ、大学進学と同時に上京し、バンド活動をしていたが、友人の自殺をきっかけに、コミュニティのあり方を考えるようになる。その友人は画家を目指していたが、なかなか芽が出ず、一度は就職をしたが、人付き合いが苦手で、仕事が長続きしなかった。そこで、何もできなくても、お金がなくても笑っていられるコミュニティをつくりたいと決意し、農音の活動を始めた。

はれひめを収穫する田中代表

移住にかかる費用は、交通費、宅配費合わせて20万円もない。住居や農地の確保は農音のメンバーがサポートする。耕作放棄地が多いので農地はほぼ無料だ。住居も、一軒家で家賃の最高値3万円で、大家さんとのコミュニケーション次第で無料もあり得るという。

DIYでレトロな自宅を改造する移住者もいる。夜には、島の空き倉庫などでジャムセッションが行われる。東京で農業支援を行うIT企業と組み、オリジナルみかんブランド「真ん中」も立ち上げた。

NPO農音

・農音 「わ」
https://www.youtube.com/watch?v=WIiVVBK9-y4
・農音CM 「シリアス蜜柑」
https://www.youtube.com/watch?v=gRehF3gMLLw