筑波大学の有志学生が福島県いわき市に住む人々の胸中に迫ったドキュメンタリー映画を製作した。撮影したのは、東日本大震災から2年半が過ぎた2013年9月。福島第一原発からすぐ近くの地域に、「どうして住み続けるのか」、住民たちが出す答えに事態の複雑さを改めて知ることとなる。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

撮影した、有馬俊さん、岡崎雅さん、三藤紫乃さん

学生たちが製作した映画は、「いわきノート」。有志で集まった11人の学生が3人1チームを組み、それぞれで撮影や録音、取材などを行った。機材を扱ったことがない学生が大半を占めていたので、事前にプロのカメラマンなどから撮影のレクチャーを受けたり、インタビュー方法を学んだ。

取材対象者は多岐にわたる。子どもを持つ母親や仮設住宅に暮らす老夫婦、海辺でサーフショップを経営するサーファー経営者、初代フラガールら50組だ。撮影総時間は、100時間に及んだ。

震災とは何だったのかを知りたいという思いでこの企画に応募した熊本出身の三藤紫乃さん(筑波大学社会・国際学群2年)は、一児の母親らへインタビューを行った。知りたいとは思っていたが、外部者として「どこまで踏み込んだ質問をしていいのか」悩んだと振り返る。取材した人に、気を使われたことも感じたという。

撮影する様子

「どうしていわきに住み続けるのか」――劇中の中で、この質問は繰り返し見られた。福島県から県外への避難者数は48364人いるが、一方で残り続ける人たちもいる。「経済的にも厳しいし、新しい土地で暮らす気力がない」という人もいれば、津波から船を守ったことで家族を失ってしまった漁師は、「残り続ける意味を探している」と答えた。「移住すればいい」と簡単に他人事で言える問題ではないことを実感させられるシーンだ。

録音を担当した岡崎雅さん(筑波大学人間学群2年)は、「好きなことで何かしたかった」とこの企画に応募した。製作を終えて、「2年半経っても、復興へはまだまだ」と話す。東日本大震災の津波は、いわき市内の海岸線60キロ全域に到達し、全半壊戸数は50087戸、犠牲者は455人に上った。

学生たちは取材をし、住民の二面性に気付いたという。表向きは明るく、人当たりの良さを感じた人でも、不安を打ち消すために「大丈夫」と毎日自分に言い聞かせていたのだ。1歳のときに、兵庫で阪神淡路大震災を経験した有馬俊さん(筑波大学芸術専門学群3年)は、「2年半が過ぎたからこそ聞ける質問もした。現実を感じてほしい」と訴える。

【オルタナS×いわきノート特別イベント 「学生たちができる被災地支援のかたち」】

5月11日、渋谷アップリンクで行われるいわきノートの上映会後、学生監督たちと復興支援活動をする学生数名とで対談イベントを行います。学生主体でできる「被災地支援」について考えます。

トークショー出演決定者
・岡田勝太さん(法政大学4年、NPO法人SET)
・細田侑さん(東京都市大学2年、つなプロ気仙沼)
・いわきノート製作に携わった学生数名

5/11(日)13:00上映の回 予約フォームはこちら
一般・シニア¥1,000/学生¥500/UPLINK会員¥800