若い女性に人気のファッションビルが提案する、新しいショッピングスタイルは「社会性」だ。服が生産される過程や、作り手の素顔に触れ、おしゃれに新要素を加える。発案したのは、入社まもない男性社員だ。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
ルミネ大宮は5月20日から6月1日にかけて、全館を使って、エシカルキャンペーンを行う。エシカルとは、直訳すると「倫理的・道徳的」という意味を持つ形容詞だ。生産者と正当な雇用契約を結ぶフェアトレードやオーガニック素材を用いたブランドのことを、エシカルファッションブランドと呼ぶ。
キャンペーン期間中は、ルミネ大宮 ルミネ2の各階にエシカルファッションブランドのポップアップショップが立ち並ぶ。エシカルに耳慣れない人のために、「エシカルとは」を分かりやすく説明するパネル展やワークショップも行われる。
さらに、土日限定で、春夏レディースの下取りキャンペーンもあり、1アイテムに付き500円のショッピングチケットと交換できる。下取りしたアイテムは、NPOを通じて、途上国や東北支援に役立てられる。
ルミネとして、エシカルをテーマに催事を展開するのは初である。このキャンペーンを発案したのは、大宮店 営業部・フロアマスターの布施哲也氏(26)だ。布施氏は入社4年目の若手社員で、学生時代は、国際協力や環境問題について学んでいた。エコに関心があり、入社してからも環境系イベントに参加し、情報収集をしていた。
2013年10月、入社3年目の社員が研修の一環として、社長をはじめ経営層に改善点や新規事業を提案する機会に、布施氏は「エシカルプラン」を発表した。「大学で学んだことを、事業に生かしたかった」と言う。発表を聞いていた、大宮店の飯塚和則営業部長は、「時代の流れで、社会性に関心を持つ若者が増えていることは知っていた。会場にいた多くの人から賛同の声があがった」と話す。
しかし、布施氏は、入社以来営業部におり、キャンペーンのプロデュース経験は初だった。そこで、声をかけたのが、アッシュ・ペー・フランスだ。同社は、ファッションとデザインの合同展示会「ルームス」を主催している。ルームスで、エシカルエリアを取り仕切る坂口真生氏が協力し、クリエイティブから空間デザインまで手がけた。
坂口氏は、今回のキャンペーンのコンセプトを、「気付き」だと言う。「エシカルという言葉を知らない人でも、ショッピングを楽しむことで、商品の裏側のストーリーが分かることを狙った」。
ルミネ大宮には、平日8万人、休日13万人が訪れる。そのうちの大半が20~30代の女性だ。同店での反応しだいで、今後、エシカルが全社的に広がっていくことも考えられる。評価の指針は、特に設けていなく、「お客さまや接客しているスタッフの表情で判断する」(飯塚営業部長)とのことだ。