社会問題を多く取り扱うポレポレ東中野で、5月31日から「SAYAMAみえない手錠をはずすまで」が上映される。殺人犯の冤罪を受けながら、半世紀以上生き抜いてきた石川一雄さんの日常を追いかけた作品だ。狭山事件を扱った作品は多く存在するが、石川さん本人に迫るものはこれが初めて。製作には900もの個人・団体からの支援が集まった。(オルタナS編集部員=佐藤 理来)
狭山事件は1963年の発生からいまだに解決していない、現在進行形の冤罪事件だ。石川さんが部落出身であったことから、差別意識も絡み証拠のねつ造などが行われた。1994年の仮出獄まで32年間投獄され、狭山に戻った今もなお闘いの日々が続いている。
ただ、監督の金聖雄が切り込んだのは、「冤罪被害」「被差別部落」などの具体的課題ではなく、もっと抽象的な分野だ。一歩ずつ生き抜き、あきらめずにいる石川さんの姿を映しだす。74歳になった彼の夢は「無実を証明して中学校に行くこと」。苦難の連続ながらも、必ずしも不幸とは言えない。そこにはいろいろな問いかけが詰まっているという。
狭山事件はすでに3度の再審請求をしているもののすべて却下。現在15回目の三者協議を迎え新証拠も明らかになっているが、いまだ再審開始は実現してない。