国際フェアトレード認証ラベルの普及推進および認証事業を行うNPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン(FLJ)は5月、大手企業担当者向けに「フェア」について考える体験型ワークショップを開催した。自由貿易が引き起こす課題を把握し、フェアトレードの有効性を再認識してもらうことが狙いだ。世界では、調達基準に戦略的にフェアトレードを導入する企業が増えており、国内でも需要は高まっている。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

「貿易ゲーム」に取り組む企業担当者たち

当日のワークショップには、商社、製造業、ITサービス業、流通など大手企業25社から40人の担当者が参加した。行ったのは、世界の不平等さを体感するシュミレーション型「貿易ゲーム」だ。

グループに分かれ、社会的課題の解決につながる仕組みを考えた。参加者たちは、ゲーム感覚で、情報格差や資源格差を学び、フェアトレードの意義を体感した。

今企画は、NTTデータ・社会貢献推進室が会場提供や企業CSR担当者への参加呼びかけなどを協力した。同社は、社員レストランや来客者に提供するコーヒーにフェアトレードコーヒーを提供してきた。

今年の株主総会にあわせて、株主への手土産用として、フェアトレード認証原材料を使ったケーキやクッキーを商品開発した。同社・社会貢献推進室・前田京子氏は、フェアトレードを扱う良さを、「日々なにげなく消費しているものや、消費することが決まっているもので、世界的な社会課題である貧困、人権・児童労働などの改善にかかわれること」と話す。この仕組みには、社員や社外ステークホルダーからも、好意的な反応をもらっているという。

社内で消費する物品にフェアトレード製品を採用することは、社会貢献活動として、単発で大きなイベントを企画運営することに比べ、費用対効果の高い施策である。費用や稼働をあまりかけることなく、継続的に大きな効果が期待できる。

日本のフェアトレード市場規模(FLJ調べ、2012年)は72.8億円で、英国の2500億円、ドイツの700億円に比べて小さい。年間一人当たりのフェアトレード製品購入額も、国別でスイス(1位)3992円、アイルランド(2位)3906円に対して、日本はわずか57円だ。

だが、消費者の需要は高まっている。2011年にユナイテッドピープル(福岡県福岡市・関根青龍社長)とコーズブランド・ラボ(東京・渋谷・野村尚克社長)は、コーズブランドを購入する消費者412人に調査をした。購入動機についての質問には、「似た商品を購入するなら社会貢献につながる方が良いと思ったから」が72.3%で最も多かった。

FLJの中島佳織事務局長は、「フェアトレードは、もはや関心のある企業だけが社会貢献的に取り組むものではない」と指摘する。「持続可能な社会構築、ひいては自社の事業の持続性や発展を考え、調達基準の中に戦略的に組み入れていくべきもの」と話す。

世界的に見ても、フェアトレードの勢いは加速している。フォルクスワーゲン社では、1999年来、社員食堂でフェアトレード認証品を提供している。自社でのフェアトレード認証コーヒー購買量は年間51トンに及ぶ。

ヴァージン・アトランティック社は、2007年9月から全フライトの機内コーヒーと紅茶をフェアトレード認証に切り替えた。創業者リチャード・ブランソンは「自社で使用する製品がどれだけ環境とそれを生産する人々に影響を与えているか、あらゆる企業が理解するべき」とコメントしている。