東日本大震災以降、大学生によるボランティア団体の数は急増している。2012年に宮城県石巻市で復興活動したボランティアの人数は累計160,655人とされ(出典:石巻災害復興支援協議会)、その多くを大学生が占めている。しかし、そんなボランティアブームの中で彼らは、組織維持や就職活動といった特有の問題も抱えている。約2,500人の学生を抱える日本最大規模の学生ボランティア団体であるNPO法人国際ボランティア学生協会(通称:IVUSA=イビューサ)の伊藤章理事(42)に彼らの現状や今後の課題について話を聞いてみた。(オルタナS特派員=和田 直也)

カンボジアの学校建設の様子

学生団体IVUSAは。過去には北海道南西沖地震や阪神淡路大震災、近年では、去年9月の台風18号の水害や、今年2月の山梨県の豪雪被害に際し、発生当初から学生を派遣することに成功している。普段から集団行動を重視し、年数回の研修トレーニングをするほかに、会員による小規模クラブが各地に散在されることで正確な情報伝達を可能にし、災害時の瞬時な行動を実現させている。

国内ボランティア以外に、もう一つの柱とする国際交流では、カンボジアでの学校建設を皮切りに、アジア諸国の山村支援などを毎年行っている。「『世界中に親戚を』という意識で。当事者感覚を日本の外でも感じてほしい」(伊藤理事)という言葉通り、現地との交流は帰国後も続き。国際問題に関して、より真剣に考える学生が増えているという。

しかし、現在、学生がボランティアをする際に「お金」が大きなハードルになっている。それ故に、社会貢献に関心を持つ若者をなかなか現場に入れることができないという現状がある。

最初は強い社会貢献の意識をもって入ってきた学生も、アルバイトや学業との両立の中で、非営利という「割に合わなさ」に気づき辞めていくケースが非常に多い。
 
最もネックになっているのが就職活動だ。いかに現場でマンパワーになるかをモットーとする彼らと、合理性や発想力を重視する企業との雇用ギャップが近年如実に現れている。「4年間ニュースの最前線を発生当初から見てきた学生たちは、普通の大学生活で学べないことを必ず経験している。その長所をいかに伝えるかこそ就職活動に大切な事でないか」と語る。

確かに、「ボランティアをしていました」と言う事で、社会貢献に関わったという優越感を感じてしまいがちだが、一番大切なのはそこで何を学んだかであり、それを明確に伝える表現力なのは社会人に共通して言えることだ。彼らもまた、他の学生同様にコミュニケーション能力を求められ始めている、そんな時代の流れを感じた。