お茶の水女子大学附属高等学校の生徒たちは9月20日、同校の文化祭の催し物としてエシカルファッションショーを開催した。当日は、同校生徒たちが、オーガニックコットンデニムやフェアトレードアクセサリー、手作りで藍染めした服などを着飾りランウェイを歩いた。このショーが実現した背景には、日本で最も早くからエシカルに着目していた同校家庭科教諭の存在があった。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

エシカルファッションショーに出演したモデル

エシカルファッションショーに出演したモデルの生徒たち

エシカルファッションショーを企画したのは、ジェンダー問題や感染症などの分野で活動するアフガン☆ボランティア部。同部には、全学年で30人が所属している。毎年、文化祭ではチャリティー物品販売を行い、その利益全額をエイズ孤児支援に取り組むNGO・PLASなどへ寄付していた。

今年は、同校の家庭科の授業で藍染め体験を行ったことがきっかけで、同部に所属する生徒たちは伝統技術で作られた衣類に興味を持った。文化祭では、藍染めしたヘアアクセサリーなどを販売し、売り上げを途上国子ども支援のNPO「プラン・ジャパン」に寄付。さらに、この技術で染めた服を用いて、ファッションショーを開催しようと考えた。

しかし、生徒たちはこれまでファッションショーを企画した経験がなかった。そのため、藍染め体験を授業で取り入れ、同校で家庭科を担当する、葭内(よしうち)ありさ教諭に助け舟を求めた。葭内教諭は、2011年度から家庭科の授業で、「エシカルファッション」を教えている。日本で最も早くから、高校生にエシカルを伝えてきた第一人者だ。

エシカルファッションを高校生に伝える葭内教諭

消費の背景を高校生に伝える葭内教諭

葭内教諭は、2013年度から導入されている家庭科の教科書(出版:東京書籍)作りにも携わり、「エシカルファッション」を取り入れ、全国の教育者などに広めている。

生徒たちから相談された葭内教諭は、普段から交流のあるエシカルファッションブランドに、ショーで着用する服の提供を依頼した。集まったのは、5つのブランド。リーとピープル・ツリーが共同開発した新作のオーガニックデニムやラオスで埋まっている不発弾をリメイクしたファブリカファブリコのアクセサリーなど。

ボトムスとアクセサリーはファッションブランドから提供してもらい、上着は生徒たちが藍染めした布で、授業で手作りしたものだ。

エシカルファッションショーに出演したモデル

エシカルファッションショーに出演したモデル

エシカルファッションショーに出演したモデル② エシカルファッションショーに出演したモデル③

同校には、3つの藍染液がある。葭内教諭自身が、藍染めの本場徳島の染め職人から教えを受け、江戸時代と同じ完全天然製法で「すくも」を原料に作ったものだ。すくもとは、藍の葉を発酵させたもので、これが藍染料となる。

藍染め体験をする生徒と葭内教諭

藍染め体験をする生徒とよし内教諭

現在、すくも職人は高齢化し、日本には徳島県に5人しかいない。伝統技術を次世代に継承するため、その職人から、すくもを分けてもらい、葭内教諭が同校生徒に教えているのだ。

エシカルファッションとは、寄付やボランティアという形ではなく、日常の「おしゃれ」からできる社会貢献である。大量生産や激安商品の裏側には、児童労働や環境汚染など理不尽な課題が潜んでいる。

葭内教諭は、普段なかなか見えないそれらの課題を授業で明らかにしてきた。「若い世代は柔軟で、考えてもみなかった消費の背景を知ると、意識を新たにしたり、今回のように行動に移す生徒も多い。早い段階で、自分の消費行動が社会を変える力となることを知ってほしい」と話す。

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