「フェアトレードは、生産者に会ってみないと分からないことだらけ」――日本で初めてフェアトレード事業に取り組んだ雑貨店でインターンとして働く、川田美夏さん(高崎経済大学経済学部4年)は、生産現場を見ることで意識が変わったという。フェアトレードを理解するために、「言葉で理解よりも、現場に行ってほしい」と訴える。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
川田さんが働くのは、フェアトレード雑貨を扱う「第3世界ショップ」(運営:プレス・オールターナティブ、東京・目黒)。同社は、1986年に日本で最も早くフェアトレード事業を始めた。東京・目黒に直営店を構え、民芸品や食品、衣類などのフェアトレード雑貨を揃えている。生産者への賃金は前払いで、額は話し合って決めている。フェアトレード事業の先駆者として、起業家向けのビジネススクールも行っている。
川田さんは2013年6月、同社にインターンとして加わり、週に2~3回ほど、直営店「アサンテ・サーナ」に、実家がある群馬から通っている。川田さんの業務は、イベント企画・運営だ。
同社にはインターン生が10人ほどおり、川田さんも入れて3人のインターン生で、企画を考えている。イベントでは、「目黒のちいさなあさ市」と称して、「生産者の顔が見える」市場を開く。国内で、無農薬栽培をする生産者から野菜や果物を仕入れて、イベントで販売する。生産者のライフスタイルや収穫物について、川田さんたちが電話取材し、その情報もポップや映像で伝える。
イベントは、アサンテ・サーナで行い、2013年10月から毎月1回の頻度で開催している。9月20日には、旬の果物フェアを開いた。当日は、とろみ感の強い大玉のもも、色も味も濃いりんご、皮ごと食べられるぶどうなど山形と山口の農家から仕入れた。どれも減農薬で作られているものだ。
いつもは、野菜や果物市だけをイベントで行うが、この日はインドネシア産カカオのワークショップも開催。同社が契約を結ぶ、インドネシア・フローレス島で働くカカオ農家の現状を伝えた。フローレス島のカカオ農家は、カカオを食べたことがない。同農家に、カカオの味を知ってもらうために、同社スタッフは、今年2月と3月にかけて、フローレス島に行き、カカオの屋台を建てた。
フローレス島に行ったメンバーには、インターン生もいる。増田幸子さん(東京造形大学美術学部2年)だ。増田さんは、約2カ月間、フローレス島に滞在し、絵や看板をつくるなど屋台の作成にかかわった。過疎化が進む同島で感じた経験を伝えるために、増田さんはワークショップを発案した。
次回のイベントは10月25日で、天然酵母パン、手作りお惣菜、無農薬野菜などを全国各地から取り寄せる。川田さんは、食材を通して、生産者の思いに触れてほしいと言う。「周りの環境や社会のことを考えた生産者さんと出会うことで、熱を感じる。フェアトレードをより深く理解することができる」。
川田さんがフェアトレードに関心を持ったのは、友達からプレゼントにフェアトレード雑貨をもらったことがきっかけ。2013年6月のことだ。今では熱中し、群馬と目黒を行き来するほどだが、それまでは、フェアトレードという言葉さえ知らなかった。
フェアトレードの魅力を知るには、「言葉よりも熱を感じること」とする。川田さんはあるとき、85歳の農家に取材をした。その人は60歳で農の道に進んだのだが、高齢であっても、イキイキとしている姿に熱を感じ、応援したいと思うようになっていったという。「フェアトレードは、生産者に会ってみないと分からないことだらけ。商品を介して、生産者の熱を伝えていきたい」と意気込む。
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