復興支援は、自らも楽しむことが大切――。大震災と原発事故から2年半が経った福島県いわき市で暮らす人びとの姿を記録したドキュメンタリー映画「いわきノート」が10日、公開された。公開を記念して、復興支援に関わる学生たちの対談イベントが11日、渋谷アップリンクで行われた。(オルタナS特派員=山中 康司)
東日本大震災から3年が経ち、若者の復興地への関心は薄れつつあるという。いま、学生は復興支援にどのような関わり方をしたら良いのか。作品上映後に行われた対談では、活動する者自身が「楽しむ」ことの大切さが強調された。
「いわきノート」の製作に加わった筑波大学の鈴木絹彩さんは、被災地での活動に楽しみを見出した一人だ。撮影の初日、いわき市に向かう電車の車窓からサーフィンをしている人の姿が見えた。
「どういう気持ちでやっているのかな」と思った鈴木さんは、その気持ちを確かめるために海辺でサーフショップを経営する男性の取材を始めた。取材するなかで「一緒にやらないか」と誘われ、自らもサーフィンをすることに。体当たり取材を通して、被災地の人々との信頼関係ができた。「自分が一番、ワクワクしながら取材するという事を実行していたのではないかな」と鈴木さんは話す。
「毎日ワクワクしています。毎日が祭りですね」と言うのは、「つなプロ気仙沼」の活動に参加している細田侑さん(東京都市大学2年)だ。「つなプロ」では、現地の方を定期的に訪問する活動をしているという。何度も被災地を訪れるなかで、人々とのつながりが生まれた。「訪問するとご馳走が用意されていたり、おかえりという言葉があったときはキュンとしちゃいますね」と話す。
「いわきノート」からは、取材をする学生と地元の人の信頼関係が垣間見える。インタビューに訪れた学生たちに「あーん」と料理を食べさせたり、恥じらいながらもカメラの前で自慢の歌を披露する女性の姿が印象的だ。
製作に加わった岡崎雅さん(筑波大学人間学群2年)は、信頼関係を築くためにも自分自身が楽しむことが必要だという。「きっと私たちはすごく笑顔だったのだと思います。純粋な心を持ってやれたんじゃいかなと」。
まずは自分自身が活動を楽しむことで、被災地の人々との信頼関係が生まれる。信頼関係が、自らの新しい楽しみを生む。対談から見えてきたのは、そんな好循環だ。震災から3年と2か月が経ったいま、改めて自分がワクワクできる被災地支援とはなにか、考えてみてはいかがだろうか。
「いわきノート」は23日まで、渋谷アップリンクで公開。詳しくはアップリンクのHPで。http://www.uplink.co.jp/movie/2014/25889