就職浪人時代にインド留学をし、第一志望に内定を得た大学生がいる。海外に飛び出ることで、「客観視」「コミュニケーション力」「志望動機」の3点が大きく培われた。3人の大学生に話を聞いた。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

北海道大学法学部4年の阿部雄介さんは、大学3年の12月に就職活動を始めた。21社を受けたが、内定はどこも取れなかった。所属するソフトボール部で全国大会に出ており、学生生活最後の大会に全力を尽くしかったので、就職留年を希望した。

インドの砂漠をラクダに乗りながら歩く阿部さん

インドの砂漠をラクダに乗りながら歩く阿部さん

阿部さんは大学を1年間休学し、2カ月のフィリピン留学、3カ月半のインド留学を行った。留学を終えて、就職活動をし、商船三井に内定を得ることができた。

就職留年中に企業研究ではなく、海外留学を選んだ背景には、今まで経験がない新興国での生活を通して、タフさや新しい考えが得られるとの思いがあった。

留学先では、語学学校に通いながら、インターンにも取り組んだ。夜には、日本人駐在員が主催するパーティーや現地のイベントに参加し、多くの人と交流した。デング熱にかかるなど苦しんだこともあったが、帰国直前にインドの砂漠をラクダに乗り、野宿しながら歩くという体験もした。

留学で学んだことは、「コミュニケーション力」と話す。「留学中初対面の人と話す機会が多かったので、話題の作り方、盛り上げ方などを学んだ。面接で話すネタという点では、留学中に多くの経験をしたので困らなかった」。

インターンしたことも役に立った。「自分の将来の軸となるものを得ることができた。就活において選考を受ける企業選び、そして最終的な企業選択の際に大いに役に立った」。

愛知学院大学法学部4年の安藤雅士さんは、大学3年から就職活動を始めた。15社ほど受け、2社から内定をもらっていたが、納得することができなかったという理由で、就職留年をした。

1年間休学し、5カ月間インドに留学した。高校生の時に家庭教師としてお世話になった先生がインドで語学学校を起業していて、誘われる形でインドに行く事を決意した。

旅することで、自然と英語とコミュニケーション能力をあげた安藤さん

旅することで、自然と、英語とコミュニケーション能力を上げた安藤さん

インドでは、毎週土曜日に、日本人学校の体育館で日本人の駐在員とバスケットボールをして汗を流した。バスケ後は近隣のデパートやオールドデリーに行き、楽しんだ。日曜日には日帰りで旅行にも行き、タージマハルや風の宮殿などの世界遺産を巡った。

安藤さんは、英語を話すことができずに、オートリキシャ(インドの3輪のタクシー)に乗れなかったり、ファーストフード店で注文ができなかったという苦い経験もした。しかし、旅の終わりには、一人で飛行機に乗り、ホテルを探し、現地のインド人に世界遺産の場所を尋ね、値切る交渉までもできるくらい頼もしくなっていた。

さまざまな体験をして、面接時のネタも豊富になり、テンポ良く話せたという。就職活動では、エン・ジャパンの内定をもらった。現在、名古屋の内定者10数人の研修リーダーとして取り組んでいる。

神戸大学経営学部4年の岩木優佳さんは、3年時に就職活動を始めた。42社を受け、1社から内定をもらったが、意図がなく大量採用する企業の姿勢に共感を感じることができず、就職留年を決意した。

半年間休学し、3カ月半インドに語学留学をしに行った。帰国後に就職活動がうまくいくのか、不安もあったが、インドへ自分1人の力で行ってみたいという強い思いから、旅立った。

不安はあったが、インド留学に挑戦した岩木さん

不安はあったが、インド留学に挑戦した岩木さん

平日は日本人が経営する語学留学学校でインターンをし、休日は友達と観光や買い物を楽しんだ。異国の地での、インターンで、「相手の考えを確認するようになった」と話す。

「就職活動のグループワークでは『前提を共有しましょう』とよく言われる。しかし、以前はそのことを理解できなかった。考え方の異なる人と過ごすことの多い留学時に、自分の前提と相手の前提は大きく違うことに気がつけた」(岩木さん)

この結果、以前はなかなか突破できなかったグループワークを85%の確率で突破できるようになったという。岩木さんは、第一志望のコマツから内定をもらった。

◆記事で紹介した3人がインド留学時にインターンしたのは、Misao India Private Limited。インド初の日本人経営の語学留学学校で、短期から長期にわたり、英語やヒンディー語を学ぶ留学生を受け入れている。すでに200名ほどの卒業生を輩出しており、海外インターンの紹介も行う。

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