日本にクラウドファンディング(CF)が急速に浸透するなか、お金を集めたいプロジェクト間の競争も激しくなってきた。オルタナ編集部はこのほど、CFプラットフォーム(仲介サイト)事業8社に「プロジェクト成功のカギは何か」を聞いた。その結果、「リターン」(見返り)というキーワードが浮き彫りになった。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

レディフォーで掲載された「森のおもちゃ美術館」プロジェクトの支援者には、ヤンバルクイナ型の積み木が送られた

レディフォーで掲載された「森のおもちゃ美術館」プロジェクトの支援者には、ヤンバルクイナ型の積み木が送られた

クラウドファンディングは群衆(クラウド)と資金調達(ファンディング)を組み合わせた造語だ。不特定多数の人がインターネット上で社会的な組織や活動をはじめ、事業家、芸術家や冒険家らに寄付をする仕組みだ。
 
米国での市場規模は前年比2倍の28億㌦(2012年、約3千億円/ 出典:米 Crowdsourcing社)に達した。日本でもCFサイトの立ち上げが相次ぎ、プラットフォーム間の競争が加速するとともに、プロジェクトの起案者も集金のための戦略が問われている。

社会貢献系プロジェクトに特化したCF「レディフォー」(運営会社オーマ、東京・文京、松尾豊社長)は2013年10月、「やんばる森のおもちゃ美術館」(沖縄県国頭村)に遊具を導入するプロジェクトで資金を募った。

600万円が目標金額だったが、486人から786万円を集めることに成功した。成功の原動力は「ヤンバルクイナの積み木」というリターンだ。この積み木は1万円以上を資金提供してくれた人に贈られる。それも、一つひとつサイズや色が異なる。美術館には、その積み木がすっぽりとはまる受け皿となる木のおもちゃが飾ってあるので、資金提供者が美術館を訪れたくなる仕組みだ。

積み木に支援者の名前を彫ったことも大事な点だ。名前を彫ったことで、支援者は「この美術館を支援した」という実感が得られる。なかには、積み木を孫にプレゼントするために複数個購入する人もいたという。この積み木が得られる1万円のチケットは600個販売されたが、499個売れて、目標金額の8割を超える500万円近くを集めた。
 
日本には子どもたちが遊べる遊具が美術館にないことが多い。今回のプロジェクトは、美術館におもちゃを置き、お金も集めるという「一石二鳥」を達成したと言える。

◆10カ月連続で100万円
 
映画監督の紀里谷和明氏は2014年5月、毛皮問題をテーマにした映像作品をつくるための制作費をCF「マクアケ」で集めた。目標金額は150万円だったが、約1カ月で148人から182万円が集まった。レディフォーで掲載された「森のおもちゃ美術館」プロジェクトの支援者には、ヤンバルクイナ型の積み木が送られた
 
この場合の「リターン」は、撮影現場を見学できる5万円のチケットだ。5個限定だったが、プロジェクトの掲載初日に完売した。
 
資金提供者のなかには、プロジェクトの趣旨に賛同した毛皮反対派の立場を取る人だけでなく、映像制作そのものを勉強したい人もいたという。
 
マクアケを運営するサイバーエージェント・クラウドファンディング(東京・渋谷、中山亮太郎社長)の坊垣佳奈取締役は、「リターンの内容を、参加型に設計することが大事」と説明する。一緒につくりあげているという感覚を共有できるかがファン集めを左右すると話す。
 
リターンには、「ユニーク性」や「参加性」に加えて、支払う金額に見合った「合理性」も必要だ。シューティングスター(運営会社・J Gマーケティング、東京・千代田、佐藤大吾社長)では2013年9月から、一つのプロジェクトが毎月1回
12カ月連続で挑戦する企画を展開中だ。プロジェクトは10カ月連続で成功しており、累計1300万円以上が集まった。
 
プロジェクトの目的は、宮城県石巻市雄勝町の震災復興と地域活性だ。毎月100万円近くを集めるという成功の要因は、「リターンにお得感を出した」ことにある。

 JGマーケティングでマーケティングを担当する上村祐介氏は、「6000~7000円のチケットを購入すれば、雄勝で獲れた新鮮な銀サケなどの魚介類が食べられる交流会に参加できる。同じ関心を持った人たちとも交流でき、現地の新鮮な食材を味わえる」と話す。

◆脱・「単なる寄付」

「リターン」だけでなく、モノや体験などを通してプロジェクトを一緒に盛り上げる感覚を共有できれば、プロジェクトが解決をめざす社会問題に関心のなかった人たちも巻き込め、ツイッターやフェイスブックなどでの広がりも期待できる。
 
逆に、興味・関心のある人だけに絞ってしまうと、資金集めはさほど広がらない可能性が高くなる。 グリーンファンディングを運営するワンモア(東京・目黒)の沼田健彦社長は、「単なる寄付ではなく、『参加した方が面白そう』と思わせる仕掛けや工夫が重要。支援を乞うスタンスではなく、プロジェクトへの参加を呼び掛けるスタンスの方が、多くの人を巻き込みや
すい」と話す。
 
企画を紹介する切り口も工夫が必要だ。地域特化型CFファーボ(運営会社・サーチフィールド、東京・渋谷、小林琢磨社長)では、祇園際で大量に捨てられる「うちわ」を回収するプロジェクトを紹介した。ファーボでキュレーターを務める増田祐基氏は、成功した要因は、「呼びかけ方」にあると言う。

祇園際で捨てられたうちわを集めて、タワーオブジェをつくった。この作成費をCFファーボで募集し、16万3000円を集めた

祇園際で捨てられたうちわを集めて、タワーオブジェをつくった。この作成費をCFファーボで募集し、16万3000円を集めた

このプロジェクトでは、うちわを重ねあわせて、オブジェとなるタワーをつくるための、回収ツールの作成費という名目だったが、「単純に、祇園際でゴミになったうちわを回収しますと訴えても響かなかっただろう」(増田氏)。
 
レディフォーが紹介した「陸前高田市の図書館に本を寄贈するプロジェクト」も参考になる。目標金額の200万円を3日間で達成し、90日間で約825万円を集めた。
 
このプロジェクトのタイトルは、「陸前高田市の空っぽの図書室を本でいっぱいにしようプロジェクト」。レディフォーのキュレーター・大久保彩乃氏は、「タイトルを読めば、どこに誰のために、何の資金を集めるのか一瞬で分かるようになっている」と評価する。

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