映画監督の紀里谷和明氏が毛皮製品の残酷な生産実態を映像化した。10月23日、その映像の発表会を渋谷で行った。紀里谷氏は、「美しいものと、醜いものを合わせたものが毛皮。見た目はきれいで、触ると気持ちいい、しかし、その生産現場にさかのぼると残酷。この違和感に忠実になってほしい」と映像に込めたメッセージを語った。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
同作品の制作予算は、紀里谷氏がクラウドファンディングサイト「マクアケ」(運営:サイバーエージェント・クラウドファンディング)で募った。支援者148人から、182万5020円が集まった。
映像作品は約3分間。裸の女性モデルが登場し、その背景に、毛皮となるミンクやコヨーテなどの動物たちが次々と表れては消えていく。女性モデルと動物たちの映像がマッチした瞬間は美を感じるが、動物たちが苦痛に叫びながら消えていく姿には言葉を失う。
同作品の特徴は、クライアントが企業ではなく、148人の個人ということ。生産現場の裏側を伝えることは、消費にかかわるため、企業は嫌がることが少なくない。しかし、クラウドファンディングでこの企画に共感した個人から集めたため、生産現場の残酷さを痛烈なまでに映像化できた。
現在、市場に流通している毛皮の80%は、動物を繁殖させて剥ぎ取ったものとされている。動物たちは極めて不衛生な檻に終生閉じ込められる。
NPO法人アニマルライツセンターの調査では、動物たちはストレスで、精神に異常をきたし、首を振り続けたり、無反応になるなどの異常行動をとる動物もいることが分かった。
毛皮を剥ぐために、動物たちを殺害するのだが、その方法も残酷なものが多い。肛門と口に電極棒を差し込み感電させたり、首の骨を手で折る場合もある。2010年の調査では生きたまま毛皮を剥がされていることも確認されている。
同作品の制作にかかわったイエリデザインプロダクツの手塚浩二社長は、「私たち消費者の選択が、動物たちを残酷なめにあわせている。普段の買い物でも、買う瞬間に、どのように生産されているのか、一度考えてほしい」と話した。
紀里谷氏は、起きている問題を、「直視することが大切」と伝える。毛皮問題だけでなく、違和感を感じる社会的課題に対して目を背けないでほしいと強く訴えた。今作品は、社会的課題を映像化する取り組みの第一弾として始まったが、第二弾は、「いじめ」をテーマに制作する予定だ。
◆制作した映像はこちら↓
https://www.youtube.com/watch?v=99yWAjKcLdM