タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう

なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)

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◆コメ余り

「農家が強くなったからよ。豚のナポレオンみたいに自作農たちは力を持ち、政治に口出しをするようになったんだ」
「当時、農民の数は多いから、地方選出の政治家たちはこぞって農家の代弁者となったってことよ」
「だから農家は政治が好きなんだ」敏夫が言った。
「農家が集まればいつでも選挙の話ずら」
「民主主義って事よ。以前は自分たちで幾らでも売れた米を、食管法のおかげで嫌々供出していたのが、米余りが始まるとそれを逆手に取って、今度は売れないから政府が買え。しかも相場より高く買えってことになっちまったんだな」
「だから米や野菜を作るより、政治に関与するようになったってこんですね」
「農協の政治力はすげえからな」
「農協って農業協同組合のことですよね」と啓介。

「そうだ。初めはやはり貧しい小作農のため、肥料や農具を共同して購入したり、営業なんてできない農家の為に纏めて販売する組織だったんだよ」
「それが数を束ねて強大な票田になると、政府に対して米は高く買え、そして売れなきゃ安く売ってしまえってことになっていったって事よ」
「その差額は税金?」
「そうだてめーの金ではないとは言え、農水省もそれには困った。『売れないものをどんどん作らないで下さいよ』それが減反政策だ」
「でも農家は売れようが売れまいが作り続けるでしょう?」と啓介。
「だから米を止めて他の作物を作れば補助金をやるってことにしたんだ」
「また税金?」啓介が言った。
「そうだ」
「でも補助金をもらって白菜作ったって儲からんし?」
敏夫が小さな声で言った。

「だからやめちまうんじゃねえか?それが耕作放棄地になっていったんだよ。そうだよね敏夫さん」
末広が言うと敏夫が曖昧に頷いた。
「そんな土地がいくらでもここいらには有るずら」
「家建てて売ったらいいじゃん」と啓介が言うと敏夫が「この辺は農振地区ってこんで、農業以外にやってはいけんよ」
「なぜ農業以外にやってはいけないの?」と啓介が敏夫に尋ねると敏夫は「農業がなくなれば日本人が腹空くじゃあ」と言った。
「でも米は余ってるんだよね」と啓介。

米

「そういうこんだね。一体奴らは作れと言っているのか作るなと言っているのか、俺も分からなくなったずら。」
「『米は作るな、そして売れない野菜を無駄に作って捨てろ』そういえば分かるか?」
「わかるわけがないですよ」
「分からんってことだ」

文・吉田愛一郎:私は69歳の現役の学生です。この小説は私が人生をやり直すとすればこうしただろうと言う生き方を書いたものです。半世紀若い読者の皆様がこんな生き方に興味を持たれるのであれば、オルタナSの編集スタッフにご連絡ください 皆様のご相談相手になれれば幸せです。

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