キリンビバレッジが販売している「FIRE(ファイア)挽きたて微糖」は農園認証制度レインフォレスト・アライアンス(RA)認証を取得している国内唯一の缶コーヒーだ。RA認証とは、農園認証制度のことで、水資源の保護・自然環境や労働状況への配慮などの点で、持続可能性があるのかをみている。2013年から同社の主力商品「午後の紅茶」の生産地には、RA認証の取得支援を行っていたが、このたび缶コーヒーにも広げ、「持続可能な商品づくり」を進める。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

RA認証マークが付いた「キリン FIRE 挽きたて微糖」

RA認証マークが付いた「キリン FIRE 挽きたて微糖」

同商品に使用しているコーヒー豆は、ブラジル・セラード地区のRA認証を取得している農園で取れたものだ。それは、ベローゾ農園で、そこから取れたコーヒー豆を51%使っている。2015年1月をめどに、100%へ引き上げる方針だ。

同社は10月、ファイアブランドの主力商品を改訂するにあたり、新しく契約する農園を探していた。そこで見つけたのが、RA認証を取得しているベローゾ農園だった。

こうして、缶コーヒーでRA認証を取得している商品は、国内では、同商品のみとなった。RA認証を取得するには、農園・工場における労働環境や周辺の自然環境・水資源に与える影響度合いの監査をクリアしなければいけない。監査は独立した認証機関が行い、依頼するための経費もかかる。

スリランカ農園で働く生産者

スリランカ農園で働く生産者

RA認証をつけたからといって、商品の購買につながるとも限らない。では、なぜそのコストを払うのか。キリン環境推進部の藤原啓一郎氏は、「持続可能な商品づくりのため」と答える。同社では、「ファイア 挽きたて微糖」以前に、RA認証取得に力を入れていた。

特に力を入れたのは、同社が展開する主力商品「午後の紅茶」の生産地スリランカだ。日本に輸入される紅茶葉の約60%がスリランカ産で、そのうちの4分の1が「午後の紅茶」に使われている。国内1のブランドでもあるため、消費量が多く、そのために環境・生態系保護にも力を入れたのだ。

「持続可能な商品づくり」を実現するために、同社は契約するスリランカ農園に、RA認証を取得するための支援を行っている。RA認証を取得したい農園に対して、認証を取得できるためのトレーニング費用を同社が負担した。しかし、独立機関から受ける監査費は、農園に負担してもらっている。

同社が監査費を負担しない理由は、農園の本気度を見るためだ。監査費は日本円にして数十万円ほどだが、数年前に内戦が終わったスリランカ農園にとってはかなりの痛手。藤原氏は、「それでも、RA認証を取りたいといってくる農園にのみ支援している」と話す。

現在、同社が支援している農園は50ほどで、RA認証を取得しているのは、そのうちの2割ほど。午後の紅茶の生産地にかんしては、今後、RA認証を増やしてく方針だ。

しかし、飲料メーカーとして重要なことは、RA認証を取得している生産地から調達すれば良いわけではないと、藤原氏は指摘する。なぜなら、監査費を支払えなくても、環境や労働に配慮している生産地もあるからだ。藤原氏は、「長期的な視点に立ち、生産者とともに、持続可能な商品づくりのために努力し続けること」と話す。

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