米国・北東部に位置するバーモント州に住む人々は、自然環境に配慮した暮らしを楽しんでいる。地産地消のスーパーマーケットやレストラン、子どもたちに食育を教える大規模施設もある。昔からある農業を大切に守り抜き、生きている。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
米国時間19日、筆者はバーモント州にあるシェルバンファームを訪れた。シェルバンファームは広大な土地を持ち、そこでは野菜、果物、乳製品などをつくっている。作った食物は、同地にあるレストランなどで使われる。
体験農園も用意しており、レストランに食事に訪れた後、誰でも作業の手伝いができる。主に、教育者らに向けた食育プログラムもある。自分の食べたものが、どこから来ているのか知ることによって、食への理解を進め、地産地消の大切さを理解してもらう。
シェルバンファームには、農作業の手伝いだけでなく、鶏や牛、羊、馬などと触れ合える施設もある。筆者が訪れた日も、数十組の親子連れがおり、牛の乳搾りや鶏を追い掛け回す子どもたちがいた。動物たちと触れ合うだけでなく、普段食べている食材が何かを知る。
バーモント州では、地産地消がキーワードの一つ。レストランもスーパーマーケットも、地元で作った食材を使う。レストランではメニュー表に、スーパーマーケットでは商品棚の上に、どこの農家が作った食材なのか、提示している。
■CMよりも、車で全米一周
シェルバンファームを訪れた後、ベン&ジェリーズの本社に戻った。デジタルマーケティング&コミュニケーション担当者とPRから話を聞いた。
昨日から続けてベン&ジェリーズのキーパーソンに取材をしているが、みな共通して話すことがある。それは、「自分たちが信じていることを続けてきた」ということだ。マーケティング主導の戦略を立てて、社会性のあるキャンペーンを打つのではなく、まず何よりも、自分たちの正義観に従い、世の中の不平等な問題を訴える。
「信じていることを続ける」――この文化ができた背景には、「楽しくなければ、やる意味はないよ。」、そして「ビジネスは、地域社会に利益を還元する義務がある」という創業者の思いがあるのだろう。
消費者のことを、単純に消費者としてとらえるのではなく、社会を変えていくパートナーとして、コミュニケーションを大切にする。競合他社がタレントを起用し、マスメディアに広告を流すなか、創業者は車を購入し、自らが運転し、全米中をまわりアイスクリームを配ったこともある。さらに、地元に感謝するために、アイスクリームを無料で配るフリーコーンデーもある。
より多くの人に社会問題に対する取り組みを知ってもらうために、ユニークさも忘れない。そのユニークさを表している一つが、商品のネーミングだ。単純に、バニラ味を「バニラ」、チョコレート味を「チョコレート」とするのではなく、一つひとつにこだわった名前をつける。
たとえば、ジョン・レノンを連想させる「イマジン ワールド ピース」。同社では、ジョン・レノン財団らと組み、米国で平和を訴えるキャンペーンを行った。同キャンペーンの一環として、つくられた。
イギリスでは、キャンペーンに合わせて商品名を変えたこともある。2012年に同性婚の合法化を求めるキャンペーンを行い、そのタイミングで、アップルパイ・フレーバーの商品名を変えた。「Oh!My!Apple Pie!」から「Apple-y ever after」とした。「Apple-y ever after」とは、「末永くお幸せに」という意味を表す「Happily ever after」をもじったもの。パッケージには、タキシード姿でブーケを持った男性2人が、ウェディングケーキの上に立っているイラストが描かれた。
これらのネーミングは、外部のコピーライターに依頼しているのではなく、マーケティングチームやフレーバーチームらで話し合って決めている。アイデアを集めるために、ファンに聞くこともある。1987年からある人気フレーバー「チェリーガルシア」がそうだ。伝説のロックバンド「グレイトフルデッド」のギタリスト ジェリー・ガルシアの名前からつけた。
彼らの話を聞いたあと、ベン&ジェリーズの工場に向かった。工場は、同州の中でも有名な観光スポット。見学ツアーがあり、同社の成り立ちやアイスクリームの作り方の説明を受けられ、最後には試食もできる。この工場では日々数十万個のアイスクリームが作られている。工場排水を再利用する施設も備え、トイレ用水などで循環している。
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