フロンテッジ(東京・港)とカヤック(神奈川県鎌倉市)は6月5日、迷子犬発見アプリ「FINDOG」(ファインドッグ)を開発した。同アプリでは、飼い犬が迷子になったとき、半径6キロメートルの範囲にいるアプリ所有者に知らせることができる。保健所や動物愛護センターに引き取られる迷子犬の約6割が命を絶っているなかで、愛犬家の気持ちをITでつなげ、地域全体で犬を守る取り組みだ。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

コミュニティの力で犬を守る「FINDOG」

コミュニティの力で犬を守る「FINDOG」

現在、日本における犬猫の飼育頭数は2,061万頭と推計されている。この数は、15歳未満の人口を上回るほどだ。その一方で、自治体の保健所や動物愛護センターなどに引き取られる犬猫の数は年間17万6千頭。そのうち、迷子や所有者不明は年間13万9千頭に及び、年間12万8千頭がやむを得ず命を失っている。

この社会的課題を解決するために、同アプリが開発された。ファインドッグを使えば、犬が迷子になったとき、近くにいるアプリ保有者に迷子になったことを知らせることができる。半径6キロメートルの範囲で、同アプリ保有者が「迷子投稿」をすると、スマホにプッシュ通知される仕組みだ。迷子犬を「助けられる距離」を、半径6キロメートルと設定した。同アプリは6月5日から、iTunes App Store で無料で配信している。

■求められる「共創」

同アプリを開発したフロンテッジの大川洋平氏は、企業にとって存在価値そのものが問われる時代に入ったとし、「Co-creation for Coexistence(共生のための共創)をテーマに異なる優位性を掛け合わせることで、社会価値と経済価値の両立を図り、人間と動物の共生を目指した」と話す。

このようなに消費者と企業が共同で、世の中の社会的課題を解決していくことを、ソーシャル・デザインと呼ぶ。SNSの発達でコミュニティの力が隆盛し、企業と共創し、価値を作り出していく。

ナイキやグーグルなど世界のハイブランドをクライアントに持つAKQAクリエイティブディレクターのレイ・イナモト氏は、「コミュニティがビジネスを食う時代になった」とも見ている。ホテルを持たない宿泊サービスAirBnBやカーシェアリングのZIPcar、そして、クラウドファンディングの勢いを例にあげ、コミュニティと対立するのではなく、融合することが求められるという。

■ITの力を社会的課題の解決へ

犬の殺処分の問題の背景には、迷子のほかにも、飼い主の「飼育放棄」もある。飼育放棄する原因となるのは、無駄ぼえや無駄がみなどの問題行動。この行動を起こしやすくしているのが、生後56日に満たない子犬を親から引き離す行為、いわゆる「8週齢問題」だ。幼すぎる子犬は生まれた環境から引き離されると、精神的外傷を負う可能性が高く、問題行動を起こしやすくなる。買い手にも、売り手にもエシカル(倫理性)が求められるのだ。

今年1月、料理研究家で前衆議院議員の藤野真紀子さんや演出家の宮本亜門さんら61人の呼びかけ人からなる「TOKYO ZEROキャンペーン」は、望月義夫環境相に動物福祉策を訴える要望書と署名を提出し、「8週齢規制の早期実現」について強く求めた。

望月環境相と面談し、動物福祉化への政策の必要性を求めた

望月環境相と面談し、動物福祉化への政策の必要性を求めた

このときに提出した署名には、ネット上で4万3623人から集まった。インターネットの発達で、社会的課題の解決速度もアプローチ方法も日々変わっている。

保護犬問題をITで解決した有名な事例は、ペットフードメーカーのぺディグリー。同社は、顔認識技術を生かして、保護犬の譲渡を促す取り組みを行った。PCに顔写真をアップロードすると、自分の顔に似た保護犬が検索される仕組みだ。愛犬と飼い主は「似る」という心理を活用した。

ファインドッグを開発した両社は今後、落し物ドットコム(東京・台東区)がクラウドファンディングで資金調達に成功した世界最小の落し物追跡タグMAMORIOの技術を取り入れ、ペット追跡のウェアラブル端末などの開発も行う。日々進化するIT技術で、迷子犬発見率の向上に挑む。

■迷子犬発見アプリ「FINDOG」はこちら

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