限界集落での鳥獣被害が止まらない。食料を求め、イノシシやシカ、サルなどが人里に下りて、稲や野菜を食べつくしてしまう。捕獲従事者の高齢化も進み、対策が求められる。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

鹿野山で森林作業を終えた環境ロドリゲスの学生たち

鹿野山で森林作業を終えた環境ロドリゲスの学生たち

早稲田大学学生環境NPO環境ロドリゲスは3月と5月、千葉県君津市の鹿野山を訪れ、農業・林業を体験し、土地整備を行った。鹿野山は、都心から車で1時間半の場所にある。以前73戸あった戸数が現在では32戸となり、空き家が目立つ集落だ。同地では、鳥獣被害に歯止めが効かない。

鳥獣被害とは、イノシシやシカ、サル、ハクビシン、アライグマなどに稲や野菜、果樹、いもなどを食べられてしまうことだ。同市では特に、イノシシによる被害が重大で、被害総額の約8割に及ぶ。君津市は、周辺地域(小糸、清和、小櫃)に比べても被害額は大きい。

林業従事者は昭和35年には約44万人だったが、平成22年(2010年)には約7万人と減った。高齢化率は18%(全産業の高齢化率は9%)だ。動物たちがエサを求めて人里に下りるようになった原因は、林業従事者の減少・高齢化がある。昔は、里山に住む人が山に入り、イノシシたちのエサ場を整理していた。しかし、里山が限界集落となり、一方でイノシシは増え続けたことで、エサ場が十分に整理されなくなった。こうして、食料を求めて人里に下りるようになったのだ。

同市の有害鳥獣被害額は2011年に9,774,000円、2013年には7,748,000円と年々減ってきてはいるが、地元民からは、「生息範囲が拡大している」との声があがっている。捕獲従事者の高齢化(62.8歳)も、鳥獣被害の要因であり、同市は捕獲免許取得に関する助成を出した。

■処理方法にも課題

鳥獣被害の問題で対策が必要なのは、捕獲することに加えて、捕獲した動物の処理方法もある。同市には、解体施設があるので、捕獲したイノシシを市場に出すことができる。同市は解体施設を持つ数少ない自治体の一つであるが、(解体施設を持っていないと市場に出すことはできない)解体できる人間が少なく、土に埋めている割合が最も多い。

さらに、解体の過程ででる、イノシシの皮・油の使い道も定まっていない。現在は、皮はストラップやペン入れ、キーホルダーなどに活用され、油は石鹸やハンドクリームに加工されているが、規模は小さい。

作業を終えたあと、山で採れた食材で自炊する

作業を終えたあと、山で採れた食材で自炊する

鹿野山を訪れた環境ロドリゲスの村山優菜さんは、「里山の問題の認知度が低いこと、林業従事者の高齢化など、課題は山積みだが、現在はさまざまな活動が起きている」と話す。同団体も鹿野山を訪問するたびに、鳥獣被害やイノシシの処理方法について地元民と話し合っている。「イノシシの肉・皮・油の活用の多様性を生かして、情報発信していきたい」と考える。

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