アーティストのAIが難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)の啓発CMに友情出演した。同CMは、ALS患者の広告プランナー藤田正裕さんが企画し、自身も出演しているもの。AIは藤田さんと10年来の友人であり、「ヒロのことをリスペクトしているから」と妊娠中にもかかわらず出演した理由を語った。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

藤田さんと撮影するAI

藤田さんと撮影するAI

AIは、友人を苦しめるALSについて、「何なのって思う。ほかの難病も含めて早く治療法が見つかってほしい」とオルタナS編集部の取材に答えた。ALS患者は、世界では年間12万人、日本には約9000人弱いる。体の感覚や知能は健全のまま、手足、喉、舌などの体中の筋肉や呼吸に必要な筋肉が徐々に痩せて力がなくなっていく難病。発症原因は不明で、いまだに有効な治療法が見つかっていない。

そのため、支援する方法が困難とされるが、AIは、「たくさんの人たちがALSのことを知って、どんどん協力する人たちが増えてほしい。みんな、よりハッピーになるために協力し合おう!!愛し合おう!!」と訴えた。AIは今年4月に新しい命を宿っており、難病と命を懸けて闘う藤田さんの姿勢を見て、「何があっても絶対にこの命は守る」と、人が生きたいと思う強さを話した。

■特設サイトで、ALSの知見を集約

同CMを制作したのは、藤田さんが代表を務める、一般社団法人END ALS(東京・世田谷)。同CMは、ALSの認知理解促進のためのプロジェクト「ONE TRY ONE LIFEROAD TO END ALS」の一環でつくられた。制作費は、クラウドファンディングサイトで募り、1カ月で、支援者301人から391万2300円を集めた。

同プロジェクトでは5月、ALSに関する知識を集めた特設サイトを公開した。同病を一躍有名にしたのは、「ALS アイスバケツチャレンジ」だが、NHKが900人に実施したアンケートによると、6割が「アイスバケツチャレンジ」を知っていたが、ALSを知っているのは、わずか2割だった。

ALSは治る見込みがないとされているが、ここ数年で海外の治験において劇的な改善事例が報告されている。しかし、いったいどのようなプロセスを経れば、できるだけ早くそれらの治療を受けられるのか、それはいつになるのか、費用はどれくらいかかるのか、誰に依頼したら良いのか、日本の全てのALS患者にとっては不明なことが多い。

藤田さんは人々に呼びかける。「このインターネット時代、ALSの理解が進めば最先端の研究者や医療業界関係者、政治に関わっている方など世界中の様々な方々から知恵や知識が集められるかもしれない。そしてこの活動はALSだけでなく多くの難病患者の課題解決のヒントになるかもしれない」。

藤田さんは、現役の広告プランナーの職業スキルを生かして、この難病の認知向上を目指す。そして、厚生労働省や医療研究機関に、治療法の確立を訴える。また、患者の生活向上も課題だ。公的医療保険の適用外である車椅子などの最新技術を利用できるようにしなければいけない。

藤田さんがALSと診断されてから、今年で6年目を迎える。発症からの平均寿命は3年から5年といわれており、病状が進行し、目以外でのコミュニケーションは取れない状態だ。藤田さんは、残り少ないかもしれない時間とエネルギーを、現在のALS患者だけでなく、これからALSとなる患者のために費やしている。

藤田さんが制作したCMは世界ALSデーの6月21日に公開された。今後は、同プロジェクトの趣旨に賛同してくれるメディアを探している。無償で放送してもらうことで、ALSへの認知度を向上させたい考えだ。

AI:
L.A 生まれ。鹿児島育ち。2000年11月「Cry, just Cry」でデビュー。2005年「Story」の大ヒットの後、2009年「BEST A.I.」でオリコンチャート1位獲得。2013年7月には10枚目のアルバム「MORIAGARO」を発売。iTunes総合トップアルバムチャートで1位を獲得。2014年からは自身のプライベートの時間に比重をおき、2015年4月には第一子の妊娠を発表。この夏7月からは7年ぶりのコラボレーションとなるEXILE ATSUSHIとの楽曲「Be Brave」が関西テレビ・フジテレビ系連続ドラマ「HEAT」の主題歌に。

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