「まずは、ゲイの友だちをつくりなさい」。簡潔なメッセージにもなっているタイトルに、LGBT初級講座という副題がつく。認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表の松中権さんが執筆した。ゲイでもある筆者の当事者としての体験をつづりながら、「知らないものは怖い」を克服するための視座を与える一冊だ。(オルタナS編集部=佐藤 理来)
本書では、多様性のあるLGBTの形や、世代間の受け止め方の違いなどを松中さんの実体験を交えながら丁寧に解説する。他にも、松中さんによれば「ゲイだからこそ身についた力があるかもしれない」と説明する。普段隠れて生活していることで身についた洞察力や、社交術、相手の立場を疑似体験する力などを逆転の発想でポジティブにとらえる。
LGBTが直面する家族の課題は、切り口を変えると誰でも起こりうる。当事者と非当事者と二分されがちだが、実際の課題に注目すると共通のものも少なくない。共通の課題を理解していくことでお互いの橋渡しとして役立つことを紹介する。
また、概論と並行してゲイとしての立場から松中さんの体験談も書かれている。松中さんにとって、今年の正月に親戚一同に対してしたカミングアウトは一つの転機だったという。意を決して話したものの、反応はあっさりとしていて拍子抜けしてしまうものだった。
なぜこんなにもスムーズに伝わったのか。その疑問に答えたのが、叔母からの「うちにはよっちゃんがいるからね」という一言だったという。
「僕が仰々しく考えていたカミングアウトは、母の家族にとって生活の延長線上のものだったのです。僕はよっちゃんがいてくれたおかげで、ごく自然に受け止められてもらえたのでした。」(本文より一部要約)
よっちゃんと言うのは松中さんの叔父にあたる人物で、普段は養護施設で生活している。よっちゃんという「みんなと違う」を受け入れていたことで簡単に伝わったのだ。
「僕の家ではきっかけがよっちゃんでしたが、他の家庭では最初のきっかけがLGBTになるかもしれません。『みんなと違う』人が家族にいるということは、偶然でしかありません」(本文より)。
ルクセンブルク首相の同性婚や、米国連邦最高裁での判決など、LGBTを取り巻く環境は急速に変化している。渋谷区の同性パートナー証明に代表されるよう、日本でも動きはみられる。好む好まざるに関わらず、LGBTについて知っていかなければならない時代だ。
「『知らないものは、怖い』が人間の防衛本能なら、『得しそうなものは、欲しい』のが人間の生存本能」(本文より)。ならば、その恐怖を乗り越えて、知ってしまえばいい。良いことが飛び込んでくるかもしれない。と明るく勇気づける一冊だ。
■まずは、ゲイの友だちをつくりなさい(講談社+α新書) 著:松中 権
★6月29日に発売したオルタナ41号読者プレゼントで、本書が当たります。松中さんのサイン入りで2名様にプレゼント。
ぜひ、ふるってご応募ください。7月31日締切です。
応募の決まりやほかのプレゼントなど詳しくは⇒ http://www.alterna.co.jp/15283