「地元が大好きな日本人と親日外国人でつくる旅行ガイドブック」――ウェブサイト「NIPPON QUEST(ニッポンクエスト)」のコンセプトだ。同サイトでは、登録したユーザーが好きな地域の名物情報の投稿と検索ができる。英語・韓国語・中国語などへの自動翻訳機能もあり、外国人を巻き込みながら地域活性化を狙う。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

NIPPON QUESTのウェブサイトトップ

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同サイトでは、地域の情報を「モノ」「食」「観光体験の3つのカテゴリーに分けて掲載している。投稿しているのは一般ユーザーで、登録は無料。一般だけでなく、企業・自治体関係者も登録ができる。

投稿機能に加えて、検索機能もある。投稿内容は、英語・韓国語・中国語に自動翻訳ができるので、訪日外国人向けの「旅行ガイド」にもなる。

自治体や企業にとっては、インバウンド向けのマーケティングとして活用することもできる。各投稿には、QPポイントがついており、ランキングになっている。QPポイントとは、ユーザーが「体験したい」「食べてみたい」と思うものに投票した数で決まる。

外国人ユーザーからの投票は、日本人ユーザーよりもポイントが高くなるように、独自のアルゴリズムを組んでいる。外国人の目線では、どのような商品・サービスが受けているのか傾向を知ることができるのだ。

同サイトを運営するのは、博報堂。経済産業省の「ふるさと名物普及環境整備事業」の一環として受託している。

■「個人的な思い入れ」が心動かす

NIPPON QUESTのクリエイティブディレクションを務めたのは博報堂ソーシャルクリエイティブプロデューサーの山田英治さん。山田さんは、復興支援や一次産業の活性化など、社会的課題を解決する案件を数多く手掛けてきた人物だ。

NIPPON QUESTのクリエイティブを担当した山田さん

NIPPON QUESTのクリエイティブを担当した山田さん

同サイトには3つのミッションがあると言う。1つは、「日本人が、まだ気付いていない日本の地域の魅力に、気付くこと」、2つ目は、「訪日外国人に定番観光地以外の知られざる地域を知ってほしいこと」、最後は、「地方の人と外国人の交流人口を増やし、地方を盛り上げること」。

山田さんは、「地元の人さえ気づいていない魅力的な人や名物をこのサイトを通じてメジャーにしたい」と話す。山田さんは企画の一環として、富山県魚津市や福岡県八女市を訪れた。

魚津市では、漁師のお母さんがつくる「バイ飯」が話題になり、地元の若手料理人が地域を盛り上げようとレシピを作成し、町をあげて売り出そうとしている。

バイ飯で町を盛り上げる地元の若手料理人たち

バイ飯で町を盛り上げる地元の若手料理人たち

福岡県八女市は、一人の雑貨店主が、地元の名産であるお茶のよさを広めるために「お茶るさん」というお茶の葉のかっこうをしたお猿のキャラクターを開発。そのキャラターで様々な商品展開をし、地域を盛り上げようとしている。

両地域に共通しているのは、地域を盛り上げたいという熱烈なキーマンがいて、その人たちが地元を巻き込んで動いている。「彼らをもっとメジャーにしたい」(山田さん)。

山田さんをはじめとする編集チームは、地域で活動する彼らの魅力を引き出す手法として、自治体や企業が一方的に情報を出していくことには限界があると感じた。「自分の地元には、こんなすごいところがある!」という個人的な思い入れがある情報が時代に適しているとして、スマートフォンで誰もが気軽に発見・発信できる投稿型の仕組みにした。

訪日外国人が年間2000万人に近づこうとするなかで、外国人も巻き込みながらの地域活性化をしようと考えた。現在、外国人留学生を中心に、アンバサダーが20人ほどいる。彼ら彼女たちは、親日で日本に来たのに、日本人と接する機会が少ないと言う。

アンバサダーたち、

アンバサダーたちの目線でも日本の地域の魅力を発信していく

同サイトは今後、コミュニティ機能を追加して、日本人と外国人がコミュニケーションを取れるようにするという。「地域の事業者が外国人向けに商品開発を考えるようになり、地域に雇用をつくるきっかけとなれば」と山田さんは話す。

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