大阪府東部にある大東市。その住宅地に残る江戸時代の古民家「辻本家住宅」がこのほど、同市初の国登録有形文化財に認定された。まちの魅力を発信するスポットとして保存されるほか、住む価値のある街づくりの創造に一役買う。(オルタナS関西支局特派員=堀内 優子)
大東市はかつて、米や麻、レンコンなどの作物が豊富にとれた農村地帯だった。町には水路が張り巡らされ、とれた野菜を運ぶ「田舟」が行き交ったという。中でも、市の北西部にある御領地区は、鎌倉時代にはすでに集落が形成され、いまなお歴史情緒を色濃く残すエリア。ここで代々庄屋を務めたのが「辻本家」だ。
「辻本家住宅」は、天保5年(1834年)に建てられた木造の家屋。身分の高い客人用の玄関である「御輿寄(おこしよせ)」や、希少な「吹きガラス」が大広間の戸に使用されていることから、この地の重鎮だったことがうかがえる。
家屋の復元工事を手掛けた匠工房(滋賀県米原市)の島田廣巳さんによると、辻本家には、大阪の河内地方に見られる民家の特徴が残っているという。「馬小屋の『マヤ』、竈(かま)の煙が外へ流れるのを防ぐ『煙返しの梁(はり)』など、この地方独特の建築様式をうかがい知ることのできる貴重な住まいだ」としている。
辻本家は、現在もその一部を住居として使っている。今回の文化財登録は、17代当主の辻本賢徳さんが、自ら市に申し出たのがきっかけ。「この地域には、歴史的なものを受け継ぐ精神が昔から根付いている。辻本家住宅が街の魅力づくりにつながれば」と話す。
同市教育委員会文化財グループの佐々木拓哉さんは、「住宅地のイメージが強い大東市だが、実は歴史的な街並みが残っている。その魅力を知ってもらい、住みたくなるような価値ある街づくりにつなげたい」としている。<PR>
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