25歳が抱える働く上での不安や悩み、やりがいはどこにあるのか。若者の労働意識などに造詣の深い小説家朝比奈あすかさんが、25歳の男女と座談会を行った。25歳は、悩みや不安を抱えつつも真面目に仕事に取り組む傾向にあることから「ワーキングピュア」とも呼ばれている。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
座談会に参加した25歳世代の皆さん。*氏名はすべて仮名です
森山さん(25)(男性)
従業員規模500人の人材ITベンチャーで働く男性。前職はEC販売を行うベンチャー。
鈴木さん(25)(女性)
フリーランス。ライター。前職は美容通販会社。
工藤さん(25)(女性)
スポーツショップ販売員。前職はアパレル販売員。
――(朝比奈)働く上では、職場の人間関係もその仕事を続けるのかの指標になると思いますが、皆さんはどうでしょうか。
森山:前職のベンチャーでは、ぼくの直属の上司は10個年上の33歳の本部長でした。体育会系の人で、大学ではパチプロなどを楽しんでいて、性格もオラオラ系でした。その部署に配属された唯一の新人だったので、お茶くみから雑用、掃除など何でもやっていました。
ベンチャーに入ったばかりのときには、優秀な人と働ける、期待に応えたいとがんばって、残業や休日出勤を繰り返したのですが、無理がたたって、会社に行けなくなってしまいました。体調が悪くても、相談する人がその本部長だから、言えませんでした。毎日、呼び出しを受けて、怒られていたので・・。
あるときは、呼び出しを受けていないのに、席に座っているだけなのに、部長の怖さのあまり、汗がダラダラ流れてきたという日もありました。結果として、対人恐怖症になってしまい、人と接することが怖くなってしまいました。
工藤:私も上司と合わなくて、退職しました。入ったばかりの頃、ミスをするたびに、「なんでできないの?なんであなたはそうなの?」という聞き方をされて本当にそれが嫌でした。「なんで」と言われても、教えてもらっていないから分からないだけなのに。
――職場でも子育てでも、「なんで」は禁句とされています。学生には、テストの前にプレッシャーをかけるのもコーチングとして良くないと言われています。
工藤:その人に直接、「辞めたい」と伝えようと思ったのですが、その人と話すと思ったら身体が拒否反応を起こしてしまい、その人の上司に言いました。そしたら、めちゃくちゃ怒られました。そうして、もうどうしたらよいのか分からず、精神科にまで通ったのですが、症状は治らず、辞めてしまいました。憧れていたアパレルの仕事だったのですが、悔しさがありました。
鈴木:私はフリーランスなので、人間関係の悩みはそこまでないですね。気をつけていることとすれば、男性のクライアントが多いのですが、「夜飲みながら打ち合わせはどう?」という誘いには極力乗らないようにしています。仕事はお酒を入れて話すようなものではないと思っていますし、ランチでもいいので。
――鈴木さんの1日はどのようなスケジュールで働いているのでしょうか。
鈴木:朝は7時半から8時までには起きるようにしています。
そして、昼までに一回家のことを終わらして、wifiが通っているカフェに行きます。午前中撮りためた写真の編集と文章を書いています。
――鈴木さんは「ゆとりのある生活」を夢みていますが、ここで言う「ゆとり」とはどのようなことを言いますでしょうか。
鈴木:楽になりたい・・ストレスが掛からない暮らしをしたいという意味に近いですね。お金に悩むことが嫌なのです。お金がないことで、人がどういうふうになっていくかを見てきたので。お金があると精神的に余裕ができて、気持ちが楽になります。それが理想。かつかつな生活を送ることだけは嫌。
森山:ぼくもお金には悩みたくないですね。大学卒で手取り20万円を切るのは厳しい。
――みなさんそれぞれの理想の生活を夢見て働いていますが、今の職場に快適さを感じていますか。
森山:ぼくは上司や同僚との距離感のつかみ方が分かったので、だいぶ楽になりました。前職では、飲み会などに参加して、距離が近づきすぎたせいで依頼されたことを断りづらくなってしまい、その結果身体を壊してしまいました。だから、転職先では人と近い関係にならないように、いつも客観的に引いた目で自分を見ることを意識しています。身体の健康を意識して、働く量もセーブしていますし。
工藤:私もいまは契約社員で働いていますが、上司には不満はないです。
――今後、理想とする将来像はどのようなものでしょうか。
鈴木:30歳までには結婚したいですね。結婚しつつ仕事も続けたいです。専業主婦にはなりたくない。旦那に頼らないと生活ができないのは嫌。自分が好きなものは自分で稼いで買えるようにいたい。
工藤:私も30までには結婚したいです。結婚しても、働きに出るとかではなくて、好きなことを仕事にしていたいです。ハンドメイドでお小遣いを稼ぐように、趣味を仕事にしたいです。
森山:まだ結婚は自分ごとのように考えることはできないですね。将来がどうなっているのか、まったく分からないというのが本音です。
対談を終えて・・
ワーキングピュア世代にあたる25歳は、キャリアでも、プライベートでも変化が訪れ、みなおうおうにして悩む時期ではある。繊細な彼/彼女らが抱えている悩みは、SNSにも影響を与える。学生のときには、何気ない投稿を思いついたときにできていたが、社会人になると、「周りからの視線」を感じて、投稿することに慎重になるという。中には、鍵つきのアカウントで投稿している人もいる。リアルな社会でも、そして、SNSのなかでも居心地の悪さを感じるようになっているのかもしれない。個人的には、一人で悩みを抱え込まず、SNSでボソッとつぶやいてみたら良いのではないかと思っている。きっと同じような悩みを抱えた人が救いの手を差し出してくれるはず。