息子が親の介護をする「息子介護」のやりがいはどこにあるのだろうか。子育てとは違い、成長する姿も見ることは少ない。息子たちは、収入のない介護一色の生活から解放されたいが、同時に終わってほしくはないという葛藤の中で、何を見出すのか。(オルタナS副編集長=池田真隆)
中越パルプ工業は18日、銀座ソーシャル映画祭を開催した。2カ月に1回ほど、社会的問題を取り扱った映画を鑑賞する上映会だ。今回上映された映画は、「息子介護」の実態に迫ったドキュメンタリー「和ちゃんとオレ」。
同映画は、10年間自宅で認知症の母親を介護してきたフリーライターの野田明宏さん(57)に密着した。「介護する人」を支える仕組みがない現代社会の不備を問う。
少子化や非婚化の影響、さらには、孤立無業者とされる「SNEP(スネップ)」に該当する独身男性は増えている。スネップとは、Solitary Non-Employed Personsの略称で、20~59歳で在学していなく、無職、未婚者、友人がいない人のことを指す。2001年には80万人だったが、東京大学の調査では2011年時点は162万人に増えていたことが発表された。
「同居」の主な介護者のうち、男性は3割を超え、男性介護者は100万人を超えた。施設入居費を支払えない収入の問題や、「施設よりも、自分のほうが丁寧に介護できる」との思いから、息子介護を引き受ける。
しかし、仕事を一度辞めてしまうと介護後の復職が厳しい。年配者ならなおさらだ。
国は在宅介護を進める方針だが、本作品プロデューサーの小松澤恭子さん(テレビ東京報道局ニュースセンター)は疑問視する。「親の介護は大切なことだが、見て見ぬふりをしたがる。当事者だけで悩むことになる。これが、この問題の根幹にある」。
男性は女性と比べて周りに相談できず、その孤独感が高齢者への虐待につながっている。虐待件数は 「息子」が 40.7%と最も多く、次いで「夫」が17.5%、「娘」が 16.5%の順であった。
小松澤さんは、「一人で悩みを抱えこまないで、相談してほしい」と話す。取材を通して、介護にやりがいは見出せなかった。「成果や結果を求めているわけではなく、ただ毎日、(介護)をするだけ。そこにやりがいのようなものはなかった」。
同作品では、介護暦10年の野村さんを始め、複数年一日も休むことなく、介護をする息子たちが出てくる。看取りにしては長すぎる親の介護。小松澤さんは、「他人事ではなく、自分はどう生きるのかを考えるきっかけとなれば」と訴える。