朝日新聞社は12月16日、マイクロソフト創業者であるビル・ゲイツ氏を招いて「Philanthropy×Innovation ビル・ゲイツと語る日本、未来」を開いた。ゲイツ氏は日本で行われている「寄付月間」キャンペーンの取り組みに共感して来日。登壇したゲイツ氏は、社会貢献に対する考えを話した。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
同フォーラムの前半では、ゲイツ氏と楽天の三木谷浩志・代表取締役会長兼社長がトークセッションを行った。その後、会場にいた駒崎弘樹・認定NPO法人フローレンス代表理事、乙武洋匡氏らの質問やSNSで集めた事前質問に答えるという流れで進んだ。
■「まずは身の回りで起きている問題から」
「活動を行うときに、何の問題に取り組めばいいのかを探し求めると見つからないことがある。理性と情熱を持ち、心に響くものがあれば、まずはそこから始めればいい。そうでないと、楽しんで活動できない。私の場合は、現場に行くことがエネルギー源になった」
これは、ゲイツ氏が持つ、フィランソロピー(慈善)活動を始めるにあたっての考え方である。ゲイツ氏は、まずは身の回りで起きていることや愛するものから、取り組み出せば良いと言う。
ゲイツ氏は不平等に対して関心を持っている。妻のメリンダ氏と立ち上げたビル&メリンダ・ゲイツ財団では、保険・教育・農業などの分野で、貧困地域と先進国の格差を是正するために活動するNPO法人や民間企業へ助成を行っている。
ゲイツ氏はさまざまな活動を支援しているが、会場に来ていた乙武洋匡氏からの、「人生を通して成し遂げたいミッションは何か」という質問には、「メリンダとともに生きているうちに、感染病を撲滅させること」と答えた。
貧困地域で苦しむ人々の需要は、先進国の市場には届かないとし、貧困の連鎖に陥っても、そこから抜け出せる変化を起こすことが重要だと語った。
■当事者意識を育むには
モデレーターを務めた堀潤氏は、「社会を変えるには、リーダーを育てることと、当事者意識を市民一人ひとりが持つことが必要。より多くの市民に当事者意識を持ってもらうには何かアイデアはないか」と質問した。
ゲイツ氏は、「親からや大学などで、若い頃から教えてもらったりして、自分で考えていない限り当事者意識は育まれない」と返した。特に、考え方が硬まってしまう30代になる前に、教育していくことが大切と考え、「イデオロギーの対立を起こすのではなく、資本主義の成果をどうすればみんなで享受できるのかを議論し合うこと」とした。
これから先、技術が格段に進歩していき、日本に居ながら、アフリカやアジアの貧困地域に暮らす人々の生活をバーチャルで体験できるようになるだろうと予測。そのような技術をうまく活用して、グローバルな問題に関心を持ってもらうように呼びかけるべきと話した。
フォーラムの最後に、ゲイツ氏は「世界をもっと良くしていきたいという思いで職を探しても良いかもしれない」と若者へ伝えた。企業のCSR活動の重要性は高まっているため、ただお金を稼ぐためだけに働くのではなく、フィランソロピーの価値観を持ちながら働くことを勧めた。
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