私は2015年9月に、大学の夏休みを利用して、日本から飛行機で約50時間、南米最貧国、ボリビアでの海外ボランティアに参加しました。この活動は、Projects Abroad というボランティアあっせん機関を通して行った、音楽プロジェクトです。活動内容は、DVや売春で自尊心が傷つけられてしまった施設に住む女の子たち6人に音楽とダンスの二つの演目を教え、練習をする、というものでした。私が地球の裏側でした体験をお話します。(寄稿=鯉江 真奈・大阪大学法学部国際公共政策学科3年)

ボリビア第三都市コチャバンバのお祭りの様子。たくさんの人と屋台で賑わう

ボリビア第三都市コチャバンバのお祭りの様子。たくさんの人と屋台で賑わう

■志―音楽の喜びを世界で―

私がボリビアの音楽プロジェクトに参加したのは、ふたつの志をもったからです。

・音楽の喜びを分かち合いたい
私たちが、音楽やダンスを通して自分を表現することや、チームメイトと信頼関係を築きながら一つの作品をつくることは、時にこの上ない喜びになります。その喜びをまだ知らぬ遠い世界の人たちと分かち合って、言葉ではできない交流をしたい、と、素朴に、強く思っています。

・2014年に私がカンボジアで挑戦・失敗した、音楽を教えるプロジェクトを今回こそ成功させたい
私は昨年カンボジアの教育施設で音楽の授業を実施しようとしましたが、失敗をしました。原因は、子供たちの音楽への興味の無さ、また私の戸惑いや自信の無さでした。今回こそは、もう一度音楽の価値を信じて、課題に真摯に取り組んで、成功させようと考えたのです。

施設内で行った発表会の様子。1か月の集大成として

施設内で行った発表会の様子。1か月の集大成として

■学び―表現で癒す心の傷―

私はこの活動を通して、音楽・ダンスをはじめとする表現活動を、心の糧として、必要としている人がいるということを思い知らされました。

施設に住む女の子たちは、DVや売春を通して自信や自尊心を傷つけてしまった13歳から16歳の少女たちです。彼女たちは、その自信を取り戻すためにダンスや歌を必要としているのだ、と施設の心理カウンセラーに聞いたのです。

「あなたの活動は、彼女たちにとてもいい影響を与えているよ。特に、ダンスはそう。振付を覚えるときには、相手の体をじっと見るでしょう。普段注意力散漫な彼女たちが集中力をぐっと発揮する。それが集中するということを学ぶ貴重な機会になっているの。

そして、実際に踊るときには、相手の体にも自分の体にも意識を向ける。それを通して、今まで自分の身体を売り物にしてきてしまった彼女たちは、自分の身体も相手の身体も、世界で唯一無二のとっても大切なものなんだってことを理解するの。歌にも同じことが言えるんじゃないかな。」

私が出会ったその女の子たちは、かわいらしくて他人思いで、一見とても元気な女性たちでした。この話を聞いてから、私には彼女たちが心の傷を表現という形で癒し乗り越えつつある姿が、痛ましくも輝いて見えるようになりました。

表現活動は、喜びを分かち合うためだけのものじゃない。世界のいたるところに、心の傷を自分で治すため、生きるための術を学ぶため、自分という存在の大切さを学ぶため、表現することを必要といている人たちがいるのだと知りました。

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