世界中で活躍する社会起業家たちは一年にどれほどの交通費をかけているのだろうか?国内外を移動する社会起業家たちの膨大な交通費が、活動の足かせになっている現状がある。ANAがそんな起業家たちを支援する仕組み”BLUE WING”を紹介する。(MAGADIPITA支局=久保田 惟・慶應義塾大学総合政策学部1年)

ANA

■ANA「BLUE WING」とは?

ANAが取り組む“BLUE WING”は乗客に社会起業家への新たな支援の機会を提供するサービスだ。乗客は、「SHARE」「MILE DONATION」「FLY」の3つのアクションを選択することから始まる。SNSで記事を「SHARE」する。貯まったマイルを寄付する「MILE DONATION」。特定の航空券を購入することで寄付する「FLY」だ。

(詳しくは公式HPへ)

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■アショカとのタイアップで支援の充実を

”BLUE WING”による支援先は全て社会起業家のネットワーク組織「アショカ」に所属する起業家たちだ。この取り組みでは、多くの人たちに社会起業家への支援を身近にしたいという思いが込められている。だから、”BLUE WING”では、支援者自身が支援先となる社会起業家を選択することができるようにした。

さらに、社会起業家に関心の高い欧米では、ANAへの評価が高まっているという。

今後は、”BLUE WING”のサービスを充実させ、より多くの社会起業家に支援が届くような仕組みにしていくことを目指す。

※アショカとは…アショカは、世界最大のソーシャル・アントレプレナー(社会起業家)のネットワークであり、グローバルな社会改革のシンクタンクです。[http://japan.ashoka.org/%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%82%AB]

■影響を受けたANAの企業理念

“BLUE WING”を担当している深堀氏は、物心ついた時から飛行機への愛が溢れていた。ANAの企業理念(当時の理念「世界の人々に夢と感動を届ける」(現在は「安心と信頼を基礎に世界をつなぐ心の翼で夢にあふれる未来に貢献します。」)に強い共感を覚え、飛行機を通して何か新たな取り組みを提案したいと思ったという。

当初は、技術職でANAに入ったが部署の仕事にとらわれない姿勢で、自身の想いをカタチにするためにたゆまぬ努力を続けた。深堀氏は幼少期を米国で暮らし、生徒の自立を重視するモンテッソーリ教育を受けていた。その中で「どれだけ世の中の人を幸せにできるか」を自然と考えたことが仕事に対する姿勢に影響していると話す。

自分の好きなことで人の役にたつという教育の中で、自分の行動や学習姿勢に責任を持つことが大きな変化を生むことになると感じた。

モンテッソーリ教育について

自身の経歴から講演をスタートさせた深堀氏

自身の経歴から講演をスタートさせた深堀氏

■大切なのはイノベーターだけじゃない

深堀氏は企業内社会起業という新たなモデルを確立させた立役者だ。自身が発案したアイデアをカタチにし、スケールを拡大させていくためには協力者が必要不可欠だったという。

深堀氏は、自発的な社員提案制度である「ANAバーチャルハリウッド」に応募した。その制度では、提案に賛同する社員をメンバーとして募集し、チームをつくって提案を一緒に練り上げる。深堀氏は、メンバーとして応募した社員一人ひとりと面談をおこなった。個々と対話することで、その人を知り、その人のことを想い、共に仕事に取り組めるようになっていった。

大切なのは、新たな物事を生み出すイノベーターだけではなく、それをサポートする身近な存在から、愚直に作業を行う現場のスタッフまで、それぞれの場面で個々人が果たすべき役割を深く考えることだという。

深堀氏は、若者に対しても、自分の力が発揮できる場面を想像し、その役割を認識するのが重要だとメッセージを送る。若いうちに、様々な環境で多種多様な役割を担うことは貴重な経験だ。

多くの経験を通して、自分がやりがいを感じる仕事に出合う。そのためにも、今の自分の役割を振り返り、一つずつ意味を考えていくことも大切になるだろう。

辿々しい取材にも優しく応えてくださる深堀氏

辿々しい取材にも優しく応えてくださる深堀氏

次に飛行機に乗る機会があれば、この取り組みを思い出してみてほしい。ちょっとした待合室で「BLUE WING」を通して、新たな発見に出会えるかもしれない。これからも若手企業内社会起業家に注目だ。次回は、エーザイのこれからの製薬業界に必要な価値観と取り組みをレポートする。

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佐野氏05

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